山田 淳夫 教授、NEDO「革新型蓄電池技術開発・高度解析」事業に参画
専門家の視点
蓄電池の基礎研究に山田淳夫教授が参画するという発表ですが、実体と物語の間に大きな開きがあります。実体面では、全固体電池や次世代リチウムイオン電池の材料探索は数年単位の長期開発であり、現時点で市場投入可能な技術は一部に限られます。一方、物語は「カーボンニュートラル実現」や「デジタル・電化社会」という壮大なビジョンでフレーミングされており、基礎研究の不確実性や量産化の壁、コスト競争力といった現実が省略されがちです。ここで発生しているのは「物語先走り」──政策目標が先行し、基礎研究の成果が実用に至るまでの時間軸や、実行レイヤー(材料メーカー・セルメーカー・自動車メーカー間の連携)が明確でない構造です。隠れた前提は「新たな電極材料が見つかれば、自動的に産業競争力が向上する」という暗黙の仮定です。しかし、基礎研究の成果が製品になるまでには、試作・スケールアップ・安全評価・規格化という非対称に長い工程が存在します。この記事は、研究参画の事実は伝えますが、どの工程で誰がどこまで進めるのかを明示していません。
2026/07/09 東京大学大学院工学系研究科 化学システム工学専攻の山田 淳夫 教授は、東京理科大学理学部第一部応用化学科の駒場 慎一 教授を代表とする研究課題「次世代ナトリウムイオン電池の技術開発」に参画します。本研究課題は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新型蓄電池技術開発・高度解析」事業に採択されたもので、株式会社GSユアサをはじめとする企業、大学、国立研究開発法人が連携し、次世代ナトリウムイオン電池の早期実用化を目指します。 蓄電池は、2050年カーボンニュートラルの実現やデジタル・電化社会において重要となる技術であり、電気自動車、電力需給調整、データセンター等、多様な用途において蓄電池需要の増大が見込まれています。一方、現在はリチウムイオン電池が広く用いられており、その構成材料について資源調達リスクが顕在化しています。ナトリウムイオン電池は、リチウムやコバルト、黒鉛などの供給リスクを伴う資源に依存しないため、蓄電池供給網の多様化と自律性向上に貢献することが期待されています。 山田教授は本事業において、2014年に発見した硫酸鉄ナトリウム Na₂Fe₂(SO₄)₃ 正極材料の実用化に向けた、産学官連携による量産・リサイクル技術の開発を担当します。Na₂Fe₂(SO₄)₃は、資源量が豊富で安価なナトリウムと鉄を主要構成元素とする究極の低コスト・低環境負荷正極材料であり、レアメタルに依存しないナトリウムイオン電池の高性能化に資する材料として期待されています。山田教授らが2014年に報告した論文では、Na₂Fe₂(SO₄)₃が新しい組成と構造を有するアルオード石型硫酸塩フレームワークとして示され、高い電極電位と高速な反応特性が報告されています。その後、山田教授は反応機構の解明、組成の最適化や量産に適した合成法の開拓を進め、本材料系についての豊富な知見を蓄積してきました。 本事業では、産学官の連携により、正極・負極・電解液などの部材開発からセル設計、量産プロセスの検討までを一体的に進めます。東京大学大学院工学系研究科は、基礎研究で培ってきた材料科学・電気化学の知見を実用化研究へとつなげることで、次世代ナトリウムイオン電池の実用化に貢献していきます。 山田教授コメントナトリウムイオン電池は、資源制約の少ない元素を活用できる点で、将来の蓄電池技術を支える重要な選択肢です。2014年にゼロベースから発見したNa₂Fe₂(SO₄)₃を、基礎研究の成果にとどめず、社会で使える技術へ育てる段階に入れることを大変心強く感じています。産学官連携を通じて、日本発の材料技術を実用化へつなげていきます。 Share on Facebook Share on LinkedIn 前の記事 ← システム創成学専攻 山口 卓さん(M2)が環境資源工学会 第144回学術講演会 優秀ポスター賞を受賞されました 次の記事 電気系工学専攻 三宅 斗希さん(M1)が DICOMO2026にて優秀プレゼンテーション賞を受賞されました → おすすめ記事
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