〈社説〉官民370兆円投資 失敗繰り返さぬために
政府が2040年度までに官民で総額370兆円超をAI、半導体、脱炭素などの成長分野に投資する戦略を打ち出した
専門家の視点
政府が掲げた2040年度までに官民370兆円超の投資計画は、AI、半導体、脱炭素など複数の成長分野を束ねた大型ビジョンです。しかし構造を分解すると、見えてくるのは「物語が先行し、実体が翻訳されていない」という構図です。 実体として、過去の政府主導投資(例えば半導体や太陽光発電の補助金政策)では、補助金投入後の産業競争力維持や雇用創出の検証が不十分でした。今回も「総額」という数字はインパクトがありますが、どの技術・制度フェーズでどの程度の投資効果を見込むか、失敗を検証するKPIが明示されていません。特に脱炭素分野では、水素やCCUSなど商用化に時間がかかる技術への投資時期と、既存の再エネ導入拡大とのトレードオフが不可避です。 物語は「成長の好循環」を描きますが、財源の裏付けや実行レイヤー(各企業や自治体の行動計画)への落とし込みが甘い。また、AIや半導体はリードタイムが短い一方、脱炭素は長期固定投資であり、この時間軸の非対称性が計画全体の整合性を歪めるリスクがあります。記事が暗に前提とする「政府の旗振りで民間投資が自律的に動く」という仮定は、過去の事例で何度も裏切られてきました。