制度・政策

脱炭素には新築よりも改修

2026-07-08
建築物の脱炭素化において新築だけでなく既存建物の改修が重要であり、省エネ基準引き上げの動きについて解説している

専門家の視点

建築物の省エネ基準引き上げが新築偏重である現状は、実体と物語の間に大きなズレがあります。既存ストックが膨大で、年間の新築着工はごく一部にすぎないという物理制約を考えれば、カーボンニュートラル達成には改修が圧倒的に効く。しかし、制度設計やメディアの関心は新築の性能向上に集中し、「最新基準を満たす家」という物語が先行しています。このズレの本質は、改修の実行レイヤーが脆弱な点にあります。新築は建築主一社の意思決定で済むのに対し、改修は区分所有者・賃借人・管理組合など多様な関係者の合意と資金調達が必要で、制度はそこに手が届いていません。さらに、省エネ基準の既存建築物への遡及適用は実質不可能であり、改修を促すインセンティブも補助金頼みで持続性に欠けます。見落とされているのは、改修市場が「いつ効くか」の時間軸で見た時に、新築規制より即効性があるにもかかわらず、制度がその特性を活かせていないという構造的事実です。脱炭素目標の真水を確保するためには、新築の物語から改修の実体へ焦点を切り替え、実行レイヤーを具体化する政策設計が求められています。

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