制度・政策

水素・流通への「価格差支援」6件、拠点整備支援2件、政府が認定 - ニュース

2026-07-07
経産省は水素社会推進法に基づき、水素・流通への価格差支援6件と拠点整備支援2件を認定した。

専門家の視点

政府が水素供給事業者6件を「価格差支援」の対象とし、拠点整備支援2件を認定したこの動きは、脱炭素燃料としての水素普及に向けた制度設計が具体段階に入ったことを示します。しかし、支援対象の選定基準や各事業の実質的な供給開始時期、価格差補填の総額や財源の裏付けは記事からは不明です。ここには「物語先走り」の構造が読み取れます。ビジョンとしての水素社会は掲げられ、制度(価格差支援)も動き出しましたが、肝心の「実体」である大規模なグリーン水素の安定供給や需要家の転換意欲、輸送・貯蔵インフラの整備スケジュールは依然として不透明です。特に、現状のグリーン水素価格が化石燃料由来水素や天然ガスと比較して数倍高いという物理制約に対して、「価格差支援」という補助金が持続可能な経済合理性を生むのか、という構造的論点が隠されています。また、有識者会議での保安規制の議論は進むものの、「誰が実行するのか」という実行レイヤー——ガス事業者、電力会社、化学メーカーといった既存業界の行動変容や人材確保——の議論にまでは記事は踏み込んでいません。

経済産業省は、6月30日に開催した有識者会議(保安・消費生活用製品安全分科会 水素保安小委員会)において、水素社会推進法の運用状況を報告した。同法に基づく「価格差に着目した支援」は3月までに6件、拠点整備支援は3月27日付で2件を認定した。 水素社会増進法に基づき、水素などの供給・需要を創出するプロジェクトについては、当初の化石燃料などとの「価格差に着目した支援スキーム」の公募に対して、2025年3月31日までの締め切りまでに計27件の計画申請があった。条件の整った案件から順次認定を進めている。 認定案件「豊田通商ほかのグリーン水素案件」は、陸上風力発電による電気を活用し、愛知製鋼の知多工場において、トヨタ・千代田化工製の水電解装置により年間約1600tの水素を製造。愛知製鋼の特殊鋼加工工程の加熱炉で利用し、電炉業界で初となるグリーン水素を用いたグリーン鋼を製造する予定。 「レゾナックほかの水素・アンモニア案件」は、レゾナックが廃プラスチックなどをガス化して年間約2万tの低炭素アンモニアを製造。繊維原料となるアンモニア誘導品(アクリロニトリル)を製造・販売する。ガス化技術は、荏原製作所とUBEの技術を日揮がライセンス化した。 「JERAほかのアンモニア案件」と「三井物産ほか:アンモニア案件」の2件は、米国の肥料メジャーCFIが40%、JERAが35%、三井物産が25%出資する米国ルイジアナ州の低炭素アンモニア製造拠点において年間約77万tを製造。JERA案件は愛知県碧南でJERA、豊田自動織機などが活用する。三井物産の案件は北海道苫小牧で、北海道電力、UBE三菱セメント、東ソーなどが利用する。 「YHC・サントリーのグリーン水素案件」は、やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)とサントリーが水電解により年間約1607tの低炭素水素を製造し、天然水の殺菌工程における熱源に利用する。「YHG・ヒメジ理化:グリーン水素案件」は、YHCとヒメジ理化がヒメジ理化田村工場および福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)において水電解により年間約1177tの低炭素水素を製造し、主にヒメジ理化が製造する石英ガラスの加工工程の熱源に利用する。 水素社会推進法の計画認定制度に基づく「拠点整備支援」は、複数の利用事業者と共同使用するもの(共用パイプライン、共用タンクなど)に係る整備費の一部を①事業性調査(FS)、②設計(FEED)、③インフラ整備の3段階で支援する。2025年6月30日の締め切りまでに計12件の申請があった。審査を進め、条件が整った案件から順次認定した。 認定案件「2025低炭素水素等第7号-1」は、北海道電力、三井物産、IHI、苫小牧埠頭が拠点整備・運営を行う。利用地は北海道苫小牧など、主な利用事業者は北海道電力、UBE三菱セメント、東ソーなど。「2025低炭素等第8号-1」は、JERAが拠点整備・運営を行う。利用地は愛知県碧南など、主な利用事業者はJERA、豊田自動織機、AGC、日本碍子、アイシン福井。 両案件とも、価格差に着目した支援の事業計画に認定済み。国内最大級の石炭火力発電所である苫東厚真発電所およびJERA碧南火力などのクリーン化とエネルギー安定供給に貢献し、IHIの混焼ボイラーを商用利用する。また、苫小牧・中京地区などの水素・アンモニアサプライチェーン構築に貢献し、自動車部品・セメント・半導体用の化学製品など、環境価値の高い多様な製品市場を創出する。 Copyright 2026 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved. このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。著作権は日経BP、またはその情報提供者に帰属します。 掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

本文は配信元の記事から取得した抜粋です。

配信元の記事を読む →
← GXニュース一覧に戻る