制度・政策

「二酸化炭素の排出量取引制度」とは?GXの実現に向けた新制度のポイント

2026-07-07
2026年4月1日から二酸化炭素の排出量取引制度が導入され、GX推進のための新制度のポイントを解説している。

専門家の視点

排出量取引制度の導入自体は、二酸化炭素に価格をつけるという実体の大きな一歩です。しかし、この記事が説明する「制度のポイント」は、制度の枠組みや仕組みの紹介に終始しており、肝心の「誰が、いつ、どの程度の排出削減を実行するのか」という実行レイヤーが完全に欠落しています。物語(制度の説明)は整っていますが、実体(具体的な企業行動や削減量の裏付け)が翻訳されていない典型です。 ここで問うべきは、「排出量を取引する市場が整えば、自動的に排出量は減るのか」という隠れた前提です。制度はあくまで手段であり、参加企業が実際に排出削減のための設備投資や工程変更を行わなければ、取引される「枠」は単なる紙切れになります。現在の制度設計では、総量規制ではなくベンチマーク方式が基本とされる可能性が高く、実質的な排出削減圧力が弱いという実体があります。 この制度は時間軸で見ると、2026年導入ですが、実効性が問われるのは少なくとも2030年に向けた中期目標の達成時です。市場参加者が「制度があるから大丈夫」と安心して投資を先送りするリスク(期待先行の裏返し)が、最も見逃せない構造的論点です。

2026年4月1日から、二酸化炭素の排出量取引制度が新たに導入されました。政府が推進する「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を実現するための新制度です。 今回導入された排出量取引制度は、二酸化炭素の年間排出量(3年間の平均値)が10万トン以上の事業者に対し、年度ごとに排出枠を割り当てるというものです。 割り当てられた排出枠が余った場合は、市場において他の事業者に売却して代金を得ることができます。多くの二酸化炭素を排出したため排出枠が足りなくなった場合は、他の事業者から排出枠を購入するか、または超過分について負担金を納付しなければなりません。 二酸化炭素の排出量取引制度が導入されたのは、政府が目指している「2050年カーボンニュートラル」の実現と、経済成長を両立させるためです。この両立の取り組みは「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」と呼ばれています。 「カーボンニュートラル」とは、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出量が、植林や森林管理などによる吸収量を上回らないようにすることを意味します。カーボンニュートラルの実現は国際社会において各国共通の課題となっているところ、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げています。 排出枠取引制度により、事業者には二酸化炭素の排出量を抑制しようとするインセンティブが働きます。その結果、国内全体で二酸化炭素の排出量が減少し、カーボンニュートラルの実現が近づくことが期待されます。 二酸化炭素の排出量取引は、脱炭素成長型経済構造移行推進機構(GX推進機構)が運営する市場において行います。排出枠が割り当てられる事業者(二酸化炭素の年間排出量が10万トン以上)のほか、金融機関や商社なども一定の基準を満たせば参加できます。排出量取引市場は、2027年秋ごろに開設される見込みです。 取引される排出枠の価格は、市場における需給によって決まります。供給に対して需要が多ければ価格は高騰し、反対に供給に対して需要が少なければ下落することが予想されます。 ただし、排出枠を投機的取引の対象としてはなりません。取引価格の乱高下を防ぐため、GX推進機構による買支えや実質的な上限額の設定といった仕組みが導入されています。 排出量取引制度の導入により、事業者が二酸化炭素の排出量を抑制すれば、市場で排出枠を売却して利益を得ることができます。そのため、多くの企業においてクリーンエネルギーに関する技術の開発や導入が進み、カーボンニュートラルの実現が近づくことが期待されます。 他方で、あえてクリーンエネルギーの導入を進めずに、市場で排出枠を購入することで対応しようとする事業者も出てくるでしょう。この辺りは経営判断によるところで、特に否定されるべきものではありません。排出量取引制度はあくまでも、マクロな視点で二酸化炭素の排出量を抑制しようとするものだからです。 もっとも、排出量取引制度を導入しただけでは、カーボンニュートラルを実現するために十分とはいえません。クリーンエネルギーに関するさらなる技術開発の進展や、それを見据えた法規制の整備なども必要です。その一例として、2026年には「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)」の施行が予定されています。CCS事業法は、二酸化炭素を回収して地下に貯留する事業に関する規制を定めたものです。 今後も2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、さまざまな技術開発や法整備の進展が見込まれます。 取材・文/阿部由羅(弁護士)ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。https://abeyura.com/https://twitter.com/abeyuralaw 頑張れ日本代表!!DIME最新号では戦術面から経営面まで、日本サッカーのこれまでとこれからを徹底解説!多数の元代表レジェンドたちへのインタビューも盛りだくさんの完全保存版!特別付録『アオアシBlueナップサック』も!さらに話題のAIビジネスツールを編集部が本気で使い倒し、その実力を徹底チェック!サッカーファンもビジネスパーソンも見逃せない充実の一冊! ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会

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