JTB、環境省「令和8年度バリューチェーン全体での脱炭素化推進モデル事業」に採択
企業のGX対応事例として、現場で何が求められるかを知る手がかりになります。
専門家の視点
環境省のモデル事業にJTBが採択されたという発表ですが、肝心なのは「バリューチェーン全体での脱炭素化」という枠組みが、旅行業という川上と川下が分散した業態でどこまで実体化できるかという点です。実体として、旅行事業者の排出量は自社のオフィスや移動手段だけでなく、宿泊・交通・イベントなど多岐にわたるサプライヤーのScope3が大半を占めます。JTBがこれらを計測・削減するには、協力企業へのデータ開示要請や統一基準の導入が不可避であり、現状では各社の算定能力やコスト負担に格差があるのが実体です。物語としては「推進モデル」という旗印が掲げられているものの、具体的なKPIや実証の範囲、失敗した場合の学習プロセスは記事から見えません。期待は、環境省の事業というお墨付きで市場が先行し、JTBのブランド力に投資が集まる可能性がありますが、実行レイヤーを担う中小の宿泊・運輸事業者が人材やシステムを欠いたまま「やるべきこと」だけ降りてくる非対称性が放置されると、物語先行で実体が翻訳されない状態に陥ります。