【金融機関のためのJ-クレジット実践コラム:第1回】なぜ、いま「地元の大企業」が脱炭素に ...
専門家の視点
大手企業が地元のJ-クレジットを調達し始めた背景には、実体として、スコープ3削減の厳格化とカーボンニュートラル主張の信頼性確保という制度上の要求があります。国際的な開示基準やサプライチェーン排出量の可視化が進み、大企業は自社だけでなく取引先の排出削減も迫られています。このとき、地元の森林や中小事業者が生み出すクレジットは、地理的・社会的な「顔の見える関係」を基盤にした調達源として経済合理性を持ちます。 物語としては、「大企業の脱炭素と地域活性化の両立」というポジティブなフレーミングが前面に出ています。しかし、ここには二つの構造的論点が潜んでいます。一つは、地元の大企業がクレジットを購入する「実行レイヤー」の具体的なプロセスです。クレジット創出者である農林業者や中小企業に、計測・報告・検証(MRV)の能力やコスト負担が十分にあるのか。制度が先行し、現場の人材と仕組みが追いついていない非対称性があります。 もう一つは、時間軸の問題です。クレジットはあくまで残余排出のオフセット手段であり、自社の直接削減を代替できるものではありません。
日頃より格別のお引き立てをいただき、誠にありがとうございます。 皆さまからのご紹介により、J-クレジットの創出案件は着実に積み上がってきました。一方で市場全体には、創出されたクレジットが十分に"流通"していないという構造課題があります。買い手につながらなければ、創出されたお客さまには「労力をかけて創ったのに売れなかった」という印象だけが残り、本当の意味での「ビジネスの成果(収益)」にはつながりにくいという現状がありました。しかしGX-ETS本格始動などを受け、大企業のクレジット調達ニーズは確実に立ち上がっています。年間需要287万t-CO₂に対し、創出量は172万t-CO₂(東証調べ)——いまは「売れる相手がいる」局面です。 つまり、クレジットを「売る(ご紹介いただく)」ことは、皆さまにとって【お客さまの課題を解決し、自社にも新たな収益やビジネスメリットをもたらす】最高のソリューションになります。 本連載は、J-クレジットを「自信を持って提案できるソリューション」として捉え直していただくための実践ナレッジを、全10回でお届けします。創出と流通が両輪で動いてはじめて、地域のGXは前に進みます。 全国のパートナー(金融機関・事業会社)の皆さまからよく伺う声です。「うちのエリアの中小企業に、J-クレジットなんてまだ早い」「サステナビリティの話を持って行っても、社長は興味を示さない」——担当者として、現場の温度感を踏まえれば自然なご感覚だと思います。 ただ、ここで一つ視点を変えてみてください。 その中小企業の社長が取引している「地元の大企業」は、いま何を見ているでしょうか。実は、その大企業こそが、いままさにリアルな脱炭素対応を迫られている当事者です。「お客さま(中小企業)自身はまだ動いていなくても、その上位取引先は確実に動いている」——この構図をご理解いただくことで、新たなビジネスチャンスを掴む最初の足場になります。 今、大企業を動かしている「外圧」は、大きく3つあります。 2026年度から、年間10万t-CO₂以上を排出する企業(全国で300〜400社) に対し、排出量の削減が「義務」となります。削減目標を超過した分は、排出枠を購入するか、市場からJ-クレジット等を購入して充当するか、所定の対応を取る必要があります。 需給ギャップの実態:年間創出量172万t-CO₂(実績) vs 年間需要量287万t-CO₂以上(東京証券取引所調べ)。年間で1年分以上の供給不足が発生する構造にあり、大企業による早期調達の動きが始まっています。 上場企業の多くは、ESG投資家から「2030年までに温室効果ガスを半減」というプレッシャーを受けています。重要なのは、自社努力で削減しきれない部分の「オフセット」が、削減計画の必然のプロセスとして組み込まれている点です。サントリー、パナソニック、オムロンなど※、大手企業がすでにクレジットを活用し始めているのはこのためです。 カーボンニュートラルを達成していることを示す適格声明書:サントリー社_PAS 2060 Qualifying Explanatory Statement(適格説明書) サントリープロダクツ株式会社天然水北アルプス信濃の森工場 (https://www.suntory.co.jp/sustainability/env_climate/pdf/pas2060.pdf) 環境価値の創出とその活用の取り組み:オムロン社:カーボンニュートラル実現に向け、環境価値を創出する「みんなでつくるエコ活サークル」(https://www.omron.com/jp/ja/edge-link/news/695.html) さらに2026年度からはSSBJ基準に基づき、上場企業は有価証券報告書内でクレジット調達計画を含めた削減計画の開示が求められます。「調達の目途がある」こと自体が、投資家向けのガバナンス情報になっていきます。 この内容は中小企業にダイレクトな内容です。SBTiの改定により、Scope3の算定・削減が厳格化されました。そのため間違いなく大企業から中小企業へ脱炭素の流れは加速します。 つまり、「うちは中小だから関係ない」と思っていた社長のもとに、ある日突然、メイン取引先から"CO₂排出量を出してほしい"という依頼が来る——という展開が、すでに各地で起きはじめています。 皆さまがすでに名刺交換されている地元の社長や、お取引先の担当者の方へ、ぜひこのように声をかけてみてください。 「○○製作所さん、△△商事さん(地元大企業)のお仕事もされていますよね。△△商事さんはSBTiを取得されており、仕入先に対しても順次CO₂削減の要請が来る可能性が高いんです。先回りして手を打っておくと、商流維持の上でも有利に働き
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