SBT「企業ネットゼロ基準」改訂を読み解く スコープ3削減へ企業に行動求める
SBTが策定する「企業ネットゼロ基準」の改訂内容を解説し、スコープ3排出削減に向け企業に行動を求める動きを報じている
専門家の視点
スコープ3削減の義務化は、SBTが「ネットゼロ基準」に求める要件として現実味を帯びています。ここで押さえるべきは、サプライチェーン全体の排出量を1.5度目標に整合させるというSBTの要求水準が、現時点の多くの日本企業の実務キャパシティを上回っているという構造的ギャップです。企業は取引先のデータ収集や算定手法の標準化にすら苦戦しており、「削減行動」以前に「可視化」が完了していないケースが大半です。つまり、物語としての「サプライチェーン全体での脱炭素」は正しい方向ですが、実体としてのデータ基盤・人材・ITシステムの整備が追いついていません。このズレは「物語先走り」の典型であり、SBT認定を取得した企業が改訂基準を満たせず、事実上の認定取り消しや目標再設定に追い込まれるリスクをはらんでいます。また、執行レイヤーの不在も深刻です。Scope3削減は経営企画・調達・営業の横断的協業を要しますが、現状ではサステナビリティ部門に負荷が集中しています。隠れた前提は「企業にデータ提供を強制できる取引先関係が既にある」ことですが、中小企業を含むサプライチェーン全体では全く自明ではありません。