グーグル、GHGスコープ3が25%増「気候変動目標の達成は困難に」
専門家の視点
グーグルのスコープ3排出量が25%増加したという数字は、AIインフラ拡大という実体が、カーボンフリーエネルギー調達という物語より速く動いていることを示しています。同社はスコープ1・2の削減に成功しましたが、これは購入再エネという「会計上の解決」であり、サプライチェーン全体の物理的な脱炭素化には直結しません。ここに構造的なズレがあります。 物語は「ムーンショット」という壮大な目標を掲げつつ、その達成経路がスコープ3の削減にまで及んでいない点で不完全です。特にアジア太平洋地域の化石燃料依存という、グーグル単独ではコントロールできない実体が足かせとなっており、目標の時間軸が現実に追いついていないことが明らかです。期待のレイヤーでは、投資家や市場がAI需要と脱炭素の両立を当然視している可能性がありますが、今回の報告はその前提が崩れつつあるシグナルです。 隠れた前提は「再エネ購入が実質的な排出削減と等しい」という考え方です。購入電力のグリーン化だけでは、サプライヤーの排出増を相殺できない現実が露呈しました。
米グーグルの2025年度のGHG排出量は、前年比18%増(2019年度比では62%増)の1450万トン(CO2換算)となった。排出量の約8割を占めるのが、サプライチェーンでの排出量を示す「スコープ3」だ。データセンターなどのAIインフラの拡大と、化石燃料への依存度が高いアジア・太平洋地域のサプライヤーによる排出増で、スコープ3排出量は前年から25%増えた。AI需要への対応と脱炭素化を両立することの難しさが浮き彫りになった形だ。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子) 米グーグルは6月30日、最新の「環境レポート2026」を公開した。 それによると、2025年度の同社の電力消費量は、AIモデルの高度化とデータセンター急拡大により、前期から37%増と記録的な伸びを見せた。そのような中で、スコープ1および2の排出量を2%削減し、電力消費量の100%を再エネの購入で賄うことに成功したという。 その一方で、同社の排出量の約8割を占めるスコープ3排出量は、前期から25%増と大幅に増加した。 グーグルは、2030年までにデータセンターを含む事業全体をカーボンフリーエネルギーのみで24時間365日稼働させるという、野心的な気候目標「ムーンショット」を掲げ、2030年のネットゼロ達成を目指す。 しかしレポートの中で、同社最高サステナビリティ責任者(CSO)のケイト・ブラント氏は「気候目標の達成はますます困難になっている」とコメントし、AI需要への対応と気候目標の達成を両立することの難しさを認めた。 「気候変動対策の目標達成への道のりは、必ずしも直線的ではないだろう。なぜなら現在、AIインフラの整備が、電力網の脱炭素化のペースを上回る速さで進んでいるからだ。しかし、私たちは引き続き、世界中で豊富かつ手頃な価格のクリーン電力の普及拡大に注力するとともに、自社の事業活動および業界全体における排出量を削減する技術革新を推進していく」(ブラントCSO) ■電力使用量が急増する中でもスコープ1・2の排出量は減った■化石燃料依存のアジア太平洋地域がスコープ3削減の足かせに■AIを活用した環境貢献や気候変動適応策の事例も示す オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。
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