金融庁、情報開示のあるべき姿を議論 開示書類の役割分担や相互参照の活用
専門家の視点
金融庁のWGが目指す開示の一本化・重複削減は、企業の報告負担軽減という実体に即した「改善」の物語です。しかし、ここで問われるべきは「そもそも開示は誰のためにあるのか」という根本的な前提です。投資家の情報入手効率を高めるという目的と、企業のコスト削減は必ずしも一致しません。相互参照の活用は、企業にとっては楽になりますが、投資家にとっては必要な情報を探す手間が増える可能性があります。特にサステナビリティ情報は、気候変動や人的資本など多岐にわたり、各書類を参照しながら統合的に理解するのは容易ではありません。制度設計が効率化に傾きすぎると、情報の「分かりやすさ」よりも「読み手の負担」が先に来るリスクがあります。この議論の奥には、法定開示と任意開示の線引き、そしてデジタル化という手段が目的化しないよう留意する必要があります。現状は、物語(効率化)が実体(企業負担)を救おうとしていますが、期待(投資家の理解促進)との間に微妙なズレが生じ始めています。次に見るべきは、相互参照が実際に投資家の意思決定に有用かどうかの検証が行われるかどうかです。
6月30日、金融庁は、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ:WG(5/18開催)」の議事録を公表した。WGでは、有価証券報告書をはじめとする各開示書類が重複し作業負担になっている現状を鑑み、情報開示のあり方や各開示媒体の役割分担および開示制度全体について幅広い意見が交わされた。本WGは、、有価証券報告書の記載事項の整理および事業報告書との一体化に向けた審議を主な目的としている。 現在、別の会社法制部会で、有価証券報告書と会社法上の事業報告等の一本化に向けた制度整備が検討されている。事業報告等の内容を記載した有価証券報告書を株主総会前までに提出した場合、会社法上の事業報告等の作成を不要とする案が示されている。 本WG内では、委員から有価証券報告書を法定開示の中核と位置付け、そのほかの開示書類が目的に応じて補完する体系へ見直すべきとの意見が相次いだ。現在は開示事項が各媒体に重複したり点在したりと、企業・投資家双方にとって分かりにくい構造に近い場合もあることから、各開示書類の目的や役割を明確化したうえで、制度全体を再設計する必要性が指摘された。 任意開示についても議論が行われた。統合報告書などは企業独自の工夫を反映できる媒体として評価する意見がある一方、有価証券報告書と統合報告書の双方を確認しなければ必要な情報を把握できない現状は非効率との指摘もあった。このため、法定開示は必要不可欠な情報に重点化し、充実した任意開示については相互参照(クロスリファレンス)の活用を認めることで重複記載を削減すべきとの考えが示された。また、統合報告書を含む任意開示についても、その役割や位置付けを見直すべきとの意見も出された。 コーポレート・ガバナンス報告書については、有価証券報告書との重複を整理すべきとの意見がある一方、検索性やタイムリーな更新機能を備え、投資家の対話や議決権行使に活用されていることから、単純な統合には慎重な意見が多く出された。また、有価証券報告書へ集約できる情報は整理しつつ、EDINETなどでコーポレート・ガバナンス報告書も一元的に参照できるよう、開示プラットフォームの連携を進めるべきとの提案もあった。 さらに、制度横断的な課題として、相互参照の活用に加え、デジタル化の推進も重要な論点となった。委員からは、紙媒体を前提とした制度から脱却し、情報ベンダーや投資家が機械的に利用しやすいデータ形式への移行や、EDINETとTDnetなど分散している開示プラットフォームを連携・一元化する必要性が指摘された。一方で、監査やエンフォースメントの観点から、制度上担保すべき主要な情報は引き続き法定開示に記載すべきとの意見も示されている。 原文:金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第5回)議事録 ESG Journalでは、実務に役立つポイントや実践ガイド(テンプレート)を紹介しています!国内外においてサステナビリティ開示の高度化や制度化が進みつつあります。ぜひこの機会に自社の実務対応を再確認してください。🌍開示基準、保証など制度への対応に関連する実務ガイドはこちら>>> ✅既存の気候開示の活用について解説✅準備段階から開示の実践までフェーズごとの実施事項を整理 ✅サステナビリティ情報の接続を解説✅つながりの「パターン」ごとに開示実践ポイントを整理 ✅SSBJ基準における第三者保証とは✅今から企業が準備できる開示準備のポイント
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