制度・政策

原発になぜ公的融資?衆院で赤沢経産相の答弁は | 環境エネルギー最前線

2026-07-01
脱炭素電源を建設する電力会社への政府による公的融資制度に関する衆院での赤沢経産相の答弁を報じている

専門家の視点

この質問の核心は、政府が発電コストで「原発は他電源と遜色ない」と説明しながら、なぜ公的融資が必要なのかという矛盾です。経産相の答弁は「長期の経済合理性はあるが、投資期間が長期かつ大規模で民間単独では困難」というものでした。ここに、実体と物語の間に明確なズレがあります。 まず実体として、政府自身の試算でも40年時点の原発コストは12.5円以上と、事業用太陽光や住宅用太陽光より高い3番手です。これは「最も収益性が高い」という従来の物語と整合しません。物語は「遜色ないコスト水準」と説明しますが、この「遜色ない」の根拠は、将来コストが不確実な中で特定の前提に依存した試算値です。そして期待として、市場や議員からは「なぜリスクの高い既存技術に公的資金を使うのか」という疑念が噴出しています。 この構造は「物語先走り」と「実体欠落」の複合型です。政府は長期の経済合理性という物語を維持しつつ、短期的なコスト優位性が崩れている実体や、公的融資の必要性を説明する具体的な比較データ(なぜ再エネや蓄電より原発なのか)を欠いています。

電気事業法改正案を審議する衆議院経済産業委員会で答弁する赤沢亮正経済産業相=2026年6月17日、衆院の公開動画から 「政府は原発が最も収益性が高いと言ってきた。なぜ原発が(公的融資の対象に)入るのか。原発の経済的優位性がなくなったということか」。原発など大型電源の建設に政府が公的融資を行う電気事業法改正案をめぐり、2026年6月の衆議院経済産業委員会でこんな質問が出た。赤沢亮正経済産業相は何と答えたのか。 これまで本欄でリポートした通り、高市政権が目指す公的融資とは、電力会社が加盟し、全国の電力需給を調整する国の認可法人「電力広域的運営推進機関(広域機関)」を通じて、原発など大型の脱炭素電源を建設する電力会社に政府が必要な資金を貸し付けるものだ。 貸し付ける資金は財政投融資(財投)のほか、電力取引で生じた収益を基に新たに創設する補助金が財源となる。財投とは政府が国債の一種である財投債を発行して資金を調達し、民間では対応が困難な大規模プロジェクトなどに資金提供することだ。 冒頭の発言は中道改革連合の落合貴之氏が6月17日、衆院経産委で行った質問だ。落合氏が指摘した「原発の経済的優位性」とは、政府が3年に1度、電源別に試算する発電コストを指している。 経産省の「発電コスト検証ワーキンググループ」は24年12月、23年と40年時点の電源別発電コストの試算(素案)を示し、25年2月に正式に発表した。 それによると、23年の発電コストは、事業用太陽光が1キロワット時当たり10.9円で最も安く、原発は「12.6円以上」と2番手だった。中型の水力が13.0円、住宅用太陽光が14.5円、陸上風力が16.3円などと続いた。 40年時点の発電コストの試算で、最も安いのは事業用太陽光の6.9~8.8円だった。2番手は住宅用太陽光の7.8~10.6円で、原発は3番手の「12.5円以上」だった。 しかし、これは「40年に発電設備を新設し運転した場合のコストを一定の前提で機械的に試算したもの」で、多くの疑問が残る。これまで本欄でリポートした通りだ(「『原発が安い』は本当か? 政府の発電コストを検証した」)。 このコスト検証試算について、赤沢経産相は衆院経産委で「40年の原発のコストは安全対策費を含む建設費や福島第1原発の廃炉や除染にかかる費用、あるいは最終処分にかかる費用もすべて織り込んで12.5円以上とお示しした」と説明。「原子力は他電源と遜色ないコスト水準になっている」と、従来通りの政府見解を示した。 これが本当なら、なぜ原発に公的融資を行うのか。そんな落合氏の質問に赤沢経産相は「今回の貸付制度は、長期で見れば(原発の)経済合理性が見込まれるとしても、投資期間が長期で、大規模な電源であり、民間だけではファイナンス(資金の手当て)が困難な場合を念頭に、必要な支援を行うものだ」と答えた。 落合氏の「原発の経済的優位性がなくなったということか」という質問について、赤沢経産相は「長期で見た経済性を否定することにはならないと考えている」と応じた。暗に「長期的に優位性はあっても、短期的には優位性がなくなった」とも受け取れるような答弁だった。 これに対して、落合氏は「政府が再生可能エネルギーや蓄電池、水素など新しい発電分野をバックアップしていくというのはわかる。原発は新型炉ではなく、普通の原発も入っている」「(原発など)既存の技術は民間のお金の活用方法を考えていくべきだ。まだ技術が確立していない分野について国が関与する、後押しをするというような区分けが必要だと思うが、大臣はいかがか」と迫った。 赤沢経産相は「ご指摘の問題意識は理解する。そういうすみ分けができれば、… 1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。

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