再エネ・技術

電力供給の安定化を目指す「中長期取引市場」、新設に向けた制度設計が本格化

2026-06-30
電力供給安定化のため、中長期取引市場の制度設計が本格化している。

専門家の視点

現時点では「中長期取引市場」という制度の輪郭だけが示され、具体的な商品設計や入札方法の詳細はこれからの段階です。この構造は典型的な「物語先走り」の様相を呈しています。市場創設の目的である「電力供給の安定化」というビジョンは明快ですが、その実体となる制度設計の進捗がまだ始まったばかりであり、実運用までに解決すべき技術的・制度的課題の具体像が見えていません。 ここで問うべき隠れた前提は、「中長期取引市場があれば供給安定性が向上する」という因果関係が自明とされている点です。実際には、市場が機能するためには参加者となる発電事業者や需要家が中長期の価格シグナルに基づいて行動できること、そしてその前提として十分な流動性が確保されることが不可欠です。制度設計だけでは不十分で、同時に実行レイヤーとなる事業者のリスク管理能力や市場参加のインセンティブ設計が伴わなければ、形だけの市場に終わるリスクがあります。 次の観測点は、制度設計の工程表と同時に、どのような参加者をどの程度想定しているのか、そして市場の流動性を担保するための具体的な仕掛けが示されるかどうかです。

安定的な電力供給を図るため、中長期の電力取引を行う新たな市場として創設が予定「中長期取引市場」。同市場における商品設計や入札方法等の具体的な制度設計について、本格的な検討がスタートした。 小売全面自由化以降、短期の電力取引を行うスポット市場の取引量は需要の3割程度に増加したが、その市場価格が高騰した際には、小売電気事業者の撤退による小売契約の解除や、多くの需要家に最終保障供給への移行を強いるなどの混乱も生じた。 また現在、小売電気事業者は容量拠出金を支払うことにより、供給力(kW)確保義務を順守しているが、発電事業者の燃料調達を考慮した量的な供給力(kWh)の確保も重要である。 このため、「電力システム改革の検証を踏まえた制度設計WG」では、小売電気事業者による中長期での供給力(kWh)の確保や、発電事業者による電源投資や燃料調達の予見可能性を向上させ、量・価格の両面で安定的な電力供給を図るため、中長期の電力取引を行う新たな市場として「中長期取引市場」を整備する方針が示された。 これを踏まえ、資源エネルギー庁では新たに「中長期取引市場検討ワーキンググループ(WG)」を設置し、中長期取引市場における商品設計や入札方法等の具体的な制度設計について検討を開始した。 制度設計WGでは、新たに2030年度(2029年度末に提出する供給計画)から、各小売電気事業者に対して、自社想定需要(kWh)の に相当する量の供給力(kWh)の確保を求めることとしている。 小売電気事業者は、発電事業者等との相対取引により、量的な供給力を調達することも可能であるが、中長期取引市場では2028年度の取引開始が予定されている。 小売電気事業者に課される供給力(kWh)確保義務との整合性を図る観点から、市場開設から当分の間は、中長期取引市場の取引年度(商品が取引される年度)は実需給の3年前と1年前として、受け渡し期間は原則として単年(1年間)の商品、つまり「3年前1年物」と「1年前1年物」の2つの商品を取引することが想定されている。 なお、小売電気事業者や発電事業者は、毎年度の供給計画を前年度の2月上旬までに広域機関に提出する必要があるほか、発電事業者・小売事業者のいずれも任意のタイミングで取引が可能となるように、商品の販売期間は可能な限り長いことが望ましいと考えられる。これらを踏まえ、「3年前1年物」「1年前1年物」いずれの商品も、販売開始時期は取引年度の開始時点(4月1日)からとして、販売期間は当該年度内(翌年3月31日まで)とした。 なお、販売開始時期・販売期間は、発電事業者に市場への供出を求める期間と必ずしも一致するものではなく、発電事業者に供出を求める期間等については別途検討を行う予定としている。 Copyright ITmedia, Inc. All Rights Reserved. ITmediaはアイティメディア株式会社の登録商標です。 メディア一覧 | 公式SNS | 広告案内 | お問い合わせ | プライバシーポリシー | RSS | 運営会社 | 採用情報 | 推奨環境

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