ポスコ640億円「国内最大電炉」完工…EU炭素規制が迫る鉄鋼業の大転換と
ポスコが国内最大級の電炉を完工し、高炉比でCO2排出量を最大75%削減する方針を明らかにした。EUの炭素規制強化を受け、鉄鋼業界の脱炭素投資が加速している。
専門家の視点
ポスコの640億円「国内最大電炉」完工は、CO2排出量を最大75%削減できるとの試算がありますが、ここには実体と物語の間に構造的なズレが存在します。実体として、電炉への転換は鉄スクラップの安定的な調達と電力の脱炭素化が前提であり、現時点では高炉と比べて生産できる鋼種や品質に制約があります。つまり「最大75%削減」は、理想的な条件下での理論値であり、全生産量に適用できるわけではありません。物語は「脱炭素の先進的投資」として評価されていますが、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対応するための防衛的投資という側面が強く、能動的な脱炭素戦略ではない可能性があります。期待は市場で先行しており、電炉への転換が直ちに競争力向上に結びつくとの見方が広がっていますが、実体は原料調達と電力のグリーン化という未解決の課題が残ります。ここでの隠れた前提は「電炉化=脱炭素の完成形」という理解です。実際には、電炉は高炉の代替ではなく、鉄鋼業の脱炭素構造の中の一つのピースに過ぎません。次の観測点は、ポスコが鉄スクラップの調達網とグリーン電力の確保をどの程度具体化できるかです。