制度・政策

環境省、ネイチャーポジティブ調達指針案を公表 企業向けガイドラインで意見募集開始

2026-06-26
環境省が企業向けのネイチャーポジティブ調達指針案を公表し、意見募集を開始した。

専門家の視点

環境省が公表したネイチャーポジティブ調達ガイドライン案は、2022年の国際枠組から国家戦略、ロードマップと積み上げられた政策の物語を、調達という企業実務に落とし込む試みです。しかしここには構造的なズレが潜んでいます。実体として、企業からは「トレーサビリティの確保が難しい」「基準が分かりにくい」という現場の課題が明確に指摘されている一方、ガイドライン案は基本的な考え方や事例を示すに留まっています。物語(「自然資本の損失は企業リスク」「多くの企業に活用を期待」)と実体(企業の実行能力に課題)の間にギャップがあるのです。 議論の中心は「誰が実行するのか」という実行レイヤーの欠落です。政策は制度として積み上がるスピードが速いが、それを実際の調達判断に落とし込む人材やデータ基盤、サプライヤーとの調整ノウハウは現場にまだ十分に備わっていません。パブリックコメントで意見を募る時点で、このギャップを埋める具体策が求められているはずです。 このガイドラインが当然としている「企業がサプライチェーン全体で自然資本情報を把握・管理できる」という前提を問い直したい。

6月15日、環境省は企業によるネイチャーポジティブ調達の実践を支援するため、「調達におけるネイチャーポジティブの実践のためのガイドライン(案)」を公表し、パブリックコメント(意見公募)を開始した。意見募集期間は7月1日まで。企業によるネイチャーポジティブ調達の実践を支援するため 今回のガイドライン案は、企業が原材料や製品・サービスを調達する際に、生物多様性の保全や自然資本への負荷低減を考慮する「ネイチャーポジティブ調達」の実践を支援することを目的としている。 政府は2022年に採択された国際的な生物多様性目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の達成に向け、2023年に「生物多様性国家戦略2023-2030」を策定した。その中で、「ネイチャーポジティブ経済の実現」を重要な政策目標の一つに位置付けている。 さらに2024年には「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」、2025年には「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025~2030年)」を策定し、企業活動における自然資本への配慮を推進している。今回のガイドライン案は、同ロードマップで掲げられた「調達におけるネイチャーポジティブ配慮の推進」を具体化する取り組みの一環となる。 環境省によると、自然資本の損失(森林減少や土壌劣化、水資源の枯渇など)は、企業のサプライチェーンにも影響を及ぼす可能性がある。原材料価格の上昇や調達先の確保が困難になるなど、企業経営へのリスクにつながるケースも想定されるという。 一方で、企業からは「原材料の生産過程を追跡するトレーサビリティの確保が難しい」「どの程度まで取り組めば十分なのか基準が分かりにくい」といった課題も指摘されている。 こうした状況を踏まえ、環境省は有識者や企業、金融機関、業界団体などで構成する「ネイチャーポジティブ経済研究会」の下に専門会議を設置し、昨年からガイドライン策定に向けた議論を進めてきた。 ガイドライン案では、企業が調達方針に自然資本への配慮を組み込む際の基本的な考え方や実践手法、先進企業の事例などが示されている。環境省は、事業規模や業種を問わず、多くの企業がネイチャーポジティブな調達活動に取り組むための参考資料として活用されることを期待している。 近年、企業経営においては気候変動対策に加え、生物多様性の保全や自然資本への影響管理が重要な課題となっている。今回のガイドライン策定は、企業のサプライチェーン全体で自然との共生を促進するための政策的な枠組みづくりとして注目される。 原文:「調達におけるネイチャーポジティブの実践のためのガイドライン(案)」に関する意見募集(パブリックコメント)について ESG Journalでは、実務に役立つポイントや実践ガイド(テンプレート)を紹介しています!TNFD開示や自然資本への対応が進みつつあります。ぜひこの機会に自社の実務対応を再確認してください。🌍TNFD開示、自然資本への対応に関連する実務解説はこちら>>> ✅サプライチェーンにおける具体的なリスクと機会✅水リスク耐性チェックリスト付 ✅TNFDのLEAPアプローチとツールの関係✅主なTNFDツール比較表付 ✅自然移行計画の概要と作成方法✅自然移行計画例(企業の実例)の紹介

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