液化水素冷熱の安定回収を可能とするシンプルな熱交換技術を開発 | ニュース | 大林組
専門家の視点
液化水素の冷熱を安定回収する新技術の実証開始を伝える本記事は、技術開発の進展を具体的に示しています。実体としては、大林組と岩谷産業が共同で二次冷媒の凝固課題を克服し、二重管構造で冷熱の90%程度を回収可能とした点や、建物空調への適用実証を開始した事実が明確です。しかし、語られ方には注意が必要です。記事は「冷熱がこれまで無駄に放散されてきた」という問題を強調し、新技術が脱炭素社会実現に貢献するという物語で構成されています。ところが、実証規模やコスト、回収した冷熱の実際のエネルギー削減量といった具体的な数値が示されておらず、現時点で業界が期待する実用化のめどや経済性は不明瞭です。この点で「規模と効果のギャップ」が潜んでいます。また、将来的な「水素利用拠点」での活用をうたうものの、具体的な利害関係者や導入コスト負担の記述は省略されています。技術進展を評価しつつも、実証段階のデータに過度に期待せず、他の冷熱利用技術との比較や全体のエネルギー効率を見極める姿勢が求められます。
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、岩谷産業株式会社(本社:大阪・東京、社長:間島寬)と共同で、国内有数の水素エネルギーの研究開発拠点である岩谷産業 中央研究所・岩谷水素技術研究所において、液化水素の冷熱利用に向けた新しい熱交換技術を開発し、本技術を用いた建物などへの適用実証を開始しました。 液化水素は、水素ガスを-253℃の極低温で液化したもので、圧縮水素ガスに比べ密度が高く、大量輸送・大量貯蔵に適しています。このため、輸送効率が求められる産業用途や水素ステーションなどで利用されています。一方で液化水素を利用する際には、主に気化器を用いて常温の水素ガスに戻しますが、その過程で生じる冷熱は活用されず、大気に放散されてきました。この冷熱を有効活用する技術の開発は、水素社会の進展を見据えたエネルギー利用の高度化と、冷却に必要なエネルギーの削減を通じて、脱炭素社会の実現を後押しする重要な取り組みです。 従来、液化水素の冷熱を利用した熱交換では、二次冷媒(※1)の凝固により、伝熱性能の変動や流路の閉塞(へいそく)などの課題がありました。熱交換の過程では、伝熱面で二次冷媒の一部が凝固(※2)し、同時に水素は蒸発します。 そこで両社は、2022年10月より関西大学の研究協力を得て、沸騰と凝固が同時に生じる伝熱過程の研究に取り組み、伝熱特性を明らかにしました。この知見を生かして岩谷産業の研究所内で実際の液化水素を用いた熱交換特性を実験的に解明し、二次冷媒の凝固が生じても、冷熱を安定して回収できる熱交換技術(以下、本技術)を開発しました。熱交換部は二重管によるシンプルな構造が特長です(下図)。 研究所内で燃料電池に供給している液化水素を冷熱源とし、本技術により回収した冷熱を建物空調や冷凍設備に利用する実証を開始しました(下図)。 液化水素の気化過程で得られる冷熱量の90%程度を回収し、建物空調などに利用することで、空調用電力の削減に寄与することを確認しました。併せて、建物空調や冷凍設備という異なる冷熱利用温度帯を段階的利用するカスケード方式により、冷熱をより有効に活用する手法について引き続き検証を進めます。 今後、本実証を通じて、両社は液化水素の冷熱を安定的に回収・利用するための設計・運用手法に関する知見を蓄積し、建物空調や冷凍設備への適用可能性を明らかにします。 将来的には、液化水素の製造・貯蔵・利用が集積する水素利用拠点において、冷熱を無駄なく活用する仕組みの構築を見据え、液化水素サプライチェーン全体のエネルギー効率向上に貢献する技術の確立を目指します。 大林組は、将来的なCO2フリー水素の安定調達や、建物・設備分野での利活用を見据え、水素の多面的な利用価値を高めるさまざまな検討を進めています。本格的な水素社会の実現に向けて、こうした取り組みを通じて、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。 この件に関するお問い合わせ先大林組コーポレート・コミュニケーション室広報課 お問い合わせフォーム プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。
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