制度・政策

【EU】欧州製紙業界、EU-ETSベンチマーク値の維持要請。脱炭素投資余力の減少懸念

2026-06-24
欧州製紙産業連合が、EU排出量取引制度の無償排出枠配分に用いるベンチマーク値の維持を欧州委員会に要請した背景には、脱炭素投資の余力減少懸念がある。

専門家の視点

欧州製紙産業連合がEU-ETSのベンチマーク値維持を要請した背景には、実体と物語の間に明確なズレがあります。実体として、製紙業界は熱需要が高く、電化や水素転換が困難な産業です。排出削減の技術的限界に直面している一方で、ベンチマーク値が引き下げられれば無償排出枠が減少し、脱炭素投資の原資が圧迫されるという構造的なジレンマを抱えています。物語としては、EUの排出削減目標は壮大ですが、産業ごとの技術成熟度や投資回収期間を考慮した移行経路が十分に具体化されていません。このため、業界は「ベンチマーク維持が投資余力維持に不可欠」と主張していますが、それは現状の排出構造を固定化するリスクも含んでいます。期待のレイヤーでは、欧州委員会や投資家は排出削減の加速を求めていますが、実体として削減技術が市場化されていない産業では、期待先行の圧力が実投資を阻害しかねません。隠れた前提は「ベンチマーク引き下げが自動的に排出削減を促進する」という発想です。実際には、無償枠削減は生産コストの上昇と域外への生産移転を招き、グローバルな排出量を増やす可能性があります。

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