石炭火力稼働向上のエネルギー緊急対策 経産省、脱炭素逆行も1年限定で安定供給優先
専門家の視点
政府が中東情勢を理由に非効率石炭火力の稼働制限を1年限定で解除する今回の措置は、脱炭素目標と安定供給のトレードオフを可視化しました。実体としては、LNG使用量を年間50万トン削減する一方、CO2排出量増加の試算は公表されておらず、環境負荷の規模が不明です。語られ方としては「緊急・限定・海外でも同様」というフレーミングで、脱炭素逆行を一時的な例外として正当化しています。期待とのズレとしては、効果が限定的(ホルムズ海峡経由LNGは総輸入量の6%程度)であるにもかかわらず「万全を期す」と大義名分を強調する点や、解除の受益者(石炭火力事業者)や環境コストの負担者が明示されていない点が挙げられます。日本企業とGX人材は、供給危機を脱炭素後退の口実にせず、むしろこれを契機にLNG調達の多様化や需要側の省エネ・再エネシフトを加速する戦略が求められます。
政府は27日、中東情勢を巡るエネルギーの緊急対策として、石炭火力発電の稼働を上げると発表した。石炭は主にオーストラリアやインドネシアなどから調達しており、中東依存は少ない。燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量が多く脱炭素化には逆行するが、電力の安定供給を優先する。 同日、経済産業省の審議会で了承された。政府はこれまで脱炭素化の方針のもと、CO2排出量の多い旧型の「非効率石炭火力」発電所に対し、金銭的なペナルティーを伴う稼働制限を課してきたが、4月から1年間限定で解除する。 制限解除による稼働で、同じ火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)の使用が、年間50万トン程度削減できるとする。封鎖されているホルムズ海峡からの輸入量の1割強にあたる。 ただ、海峡経由で調達しているLNGは日本の総輸入量の6%程度。制限解除による効果は限定的にも見えるが、経産省の担当者は「不確実性が増す中で万全を期す。事態が中長期的に続く懸念もある」と説明した。 海外でもエネルギー逼迫で石炭火力を進める動きは進んでおり、石炭の安定調達も今後の課題となる。(織田淳嗣)
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