中東情勢悪化が水素関連製品供給に影響、アフリカでの水素生産の将来に可能性、IEA報告
専門家の視点
IEAの報告では、中東情勢悪化による水素関連製品の供給混乱が具体的な尿素価格の2倍上昇という数字で示され、肥料・食糧リスクへの波及が実体的な脅威として浮かび上がっています。しかし、グリーン水素の生産量は世界全体でわずか100万トン(需要の1%)にとどまり、2030年目標は4分の1縮小しており、規模と効果に大きなギャップがあります。アフリカについては豊富な再エネ資源と長期的可能性が語られる一方、実際のグリーン水素生産は6,000トンに過ぎず、31件の事業のうち最終投資決定に至ったのは1件のみです。さらに、アンモニア生産計画の8割以上が輸出向けである点は、地元の食糧安全保障より外部需要を優先する構図を示しており、「アフリカの将来」というナラティブに隠れた利害関係者の省略が看過できません。日本企業・GX人材は、アフリカでの事業検討に際し、地元経済への実質的な波及効果を輸出志向から再評価する視点が不可欠です。
このページではjavascriptを使用しています。 国際エネルギー機関(IEA)は6月23日、水素に関する報告書「Global Hydrogen Review」を発表した。同報告によると、中東での軍事衝突(「イスラエル・米国とイランの衝突を巡る中東情勢関連情報」参照)は、水素の国際的な生産と貿易に混乱をもたらしたほか、肥料生産、石油精製、化学製品製造を支えるサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにしたという。 中東地域は世界の水素生産量の約6分の1を占め、肥料などに用いられるアンモニア、尿素のほか、メタノールや関連製品の主要な輸出国だ。これらの製品の生産や輸送ルートの混乱が世界市場での供給不足や価格の変動を招く可能性があるという。なお、尿素価格は、2026年1月から5月にかけて約2倍に上昇した。肥料価格上昇は、食糧供給にもリスクを与える可能性がある。 世界の水素需要は2025年に1億トンを超え、再エネなどにより生産されるグリーン水素の生産は前年比20%増の約100万トンに達した。グリーン水素の生産は世界の水素生産の1%を上回る見通しだという。 一方、同報告によると、コスト上昇、需要の不確実性、複雑な規制、インフラ不足などが、グリーン水素開発の障壁となり、世界各国の2030年の生産目標達成は困難との見込みだ。2030年までにグリーン水素を生産すると発表されたプロジェクトは、遅延や中止により、約4分の1縮小し、2,700万トンとなった。 同報告では、アフリカでの2024年の水素利用は310万トンで、世界の約3%を占めたとした。水素利用はアフリカでは6カ国に集中しており、エジプトがほぼ半分を占め、アルジェリアが20%、ナイジェリアが17%、南アフリカ共和国が5%、リビアが5%、赤道ギニアが3%で続いた。水素需要の4分の3近くはアンモニアによるものだ。 一方、アフリカでのグリーン水素生産は6,000トンに過ぎない。アフリカは豊富な再エネ資源を有し、将来、長期的にはグリーン水素生産の可能性を秘めている。しかし、2030年までの稼働を目指すグリーン水素事業31件のうち、最終投資決定に至ったのは1件のみだという。 アフリカでの肥料使用量は世界平均の約6分の1で、食糧の貿易赤字も抱える。このような中、アンモニア生産が増加すれば、窒素肥料調達が改善し、食糧生産向上につながる。ただ、アンモニア生産計画の8割以上は輸出向けだという。 また、報告では、アフリカでの製鉄における水素活用や再エネ由来のメタノール生産拡大の可能性もあるとした。 アフリカ水素開発については、2025年10月27日付地域・分析レポート「アフリカのグリーン水素開発(1)主要3カ国の取り組みと課題」、2025年10月28日付地域・分析レポート「アフリカのグリーン水素開発(2)産業化への課題と支援策」も参照。 ビジネス短信 f4b53afb110c904f メンバーズ・サービスデスク(会員サービス班) E-mail:jmember@jetro.go.jp
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