企業動向

「建設」の枠超える…ゼネコン、スタートアップ連携で収益源多様化狙う

2026-06-24
ゼネコンがスタートアップと連携し、GX技術を活用して収益源の多様化を図る動きを報じている。

専門家の視点

ゼネコン各社がCVCを通じてスタートアップ投資を加速する動きは、建設業の「受注生産方式」という従来のビジネスモデルが、少子高齢化や気候変動リスクという実体に直面し、収益源を多様化せざるを得ない現実の表れです。記事では清水建設の累計15件の投資実績や戸田建設の17社・8ファンドへの投資といった具体的な数字が示されており、実体としての活動は着実に進んでいます。 しかし、構造的に見ると「物語先走り」のリスクをはらんでいます。ゼネコンはスタートアップ連携によって「建設の枠を超えた」イノベーションを目指すと語りますが、投資対象の多くは建設現場の自動化や洋上風力といった、既存事業との親和性が高い領域に偏っています。真に業態変革を起こすには、宇宙やエネルギー分野など、収益化に10年以上かかる領域への投資が不可欠ですが、その実行レイヤーである人材評価や組織インセンティブの設計は記事からは見えません。 ここでの隠れた前提は「CVC投資が自動的に協業・事業化につながる」という楽観的な見立てです。実際には、異なる企業文化を持つスタートアップとの連携には、技術検証から事業化までの間に多くの壁が存在します。

出資先は海外にも広がっている(清水建設が出資したスイスのMESH AGのラボ) ゼネコン大手がコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)の活用などを通じてスタートアップとの連携を強化している。少子高齢化やデジタル化への対応などさまざまな課題に直面する中、「建設」の枠組みを超えたアイデアや技術を外部から積極的に取り込むことで、イノベーションを創出する狙いがある。既存事業の強化に加えて、中長期的な視点でビジネスモデルの変革や収益源の多様化を目指す戦略的な意味合いも大きい。(編集委員・古谷一樹) 「自社単独での研究・開発、事業化には限界がある」。清水建設NOVAREベンチャービジネスユニットの佐々木浩平コンダクターが指摘するように、建設業界では近年、外部の技術・ノウハウ活用の重要性が一段と高まっている。 背景にあるのは自然災害など複雑化する社会課題への対応と、それらを解決するツールとなり得るAI(人工知能)やロボティクス、GX(グリーン・トランスフォーメーション)などの技術の著しい進展だ。革新的な技術やノウハウを持つスタートアップに着目し、将来の成長を見据えた基盤づくりの一環として、共創に取り組む企業が増えている。 ツールの一つとして活用が増えているのがCVC。投資対象は、主力の建設事業との親和性が高い分野とは限らず、周辺事業を含め相乗効果が見込める領域の企業が想定されている。成長段階や地域も多岐にわたり、大手各社は宇宙やエネルギー、海洋など幅広い分野においてイノベーションの芽の探索に余念がない。 2020年に「10年間で総額100億円」の枠を設定した清水建設は、25年度末時点で累計15件の投資を実行した。この中には国内だけでなく、海外の企業も含まれる。 26年以降は、その動きがさらに速まっている。浮体式洋上風力発電の係留システムに用いる荷重緩和装置を手がけるアイルランド企業に出資したのに続き、建設生産プロセスへの「フィジカルAI」の導入を狙いに、スイス連邦工科大学チューリヒ校発のスタートアップ「MESH AG」にも出資した。鉄筋の加工や運搬から溶接までの一連の作業を自動化するシステムの開発を進めていく考えだ。 戸田建設もCVCにおいて、建設・不動産分野に偏重しない投資戦略を掲げている。同社は20年に3年間で30億円、24年にも3年間で30億円の投資枠を設定。国内外3400社以上のスタートアップの情報を評価した上で、社内の関係部門への紹介件数は700件を超え、17社・8ファンドへの投資実績がある。 22年にVC大手のグローバル・ブレイン(東京都渋谷区)と共同でCVCファンドを設立した東急建設は、25年度末までに17社に投資を実行した。実証実験や技術検証、事業連携の検討を継続的に行っており、オフサイトコーポレートPPA事業の立ち上げなど、「一部では事業化や現場導入につながっている」(東急建設)。 特定のCVC子会社を設立していない企業も、スタートアップへの関心を高めている。大成建設は、建設現場のDXや生産性向上などの分野において投資を積極化している。25年にはその一環として、建設や都市開発に関する技術を持つスタートアップを主な投資対象とする米国のベンチャーキャピタルファンドに出資。将来の協業や事業化につながる案件の探索活動を強化している。 顧客の要求に基づき、納期内に高品質の建造物を完成させる「受注生産方式」を特徴としてきた建設業界。企業文化が異なるスタートアップとの連携加速により、将来のビジネスモデル変革の起点となる具体的成果への期待が一段と高まっている。

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