動き出した天然水素(上)――最新研究・開発動向と将来シナリオ
自然に生成される天然水素を低コストで採掘・活用する動きが世界各地で始まっている最新研究と開発動向を紹介
専門家の視点
天然水素の議論では、実体として地質調査と試掘の進捗が存在しますが、その生産量やコストはまだ限定的です。一方、物語として「低コストで無尽蔵の水素源」というフレーミングが先行し、商業化の具体的なKPIや失敗シナリオが示されていません。期待は投資家や研究コミュニティで高まり、資源開発の興奮が広がっていますが、実体とのズレが顕著です。これは物語先走りの構造であり、ビジョンが壮大な一方で、実証段階での技術的・経済的現実が追いついていません。 隠れた前提は「天然水素がグリーン水素と同等以上にクリーンである」という点です。実際には、採掘に伴う地中環境への影響やメタン漏洩リスクが評価されておらず、ライフサイクル全体での脱炭素効果は未知数です。 次の観測点は、マリや米国での試掘結果が2025年に出るかどうかです。ここでコストがグレー水素並みに達しなければ、物語が収縮する可能性があります。日本企業には、資源権益の確保よりも、地質評価技術やモニタリングシステムで標準化を狙う戦略が示唆されます。