制度・政策

原子力政策の指針を3年ぶりに改定へ 2040年に最大550万kW分を建て替えの方針案

2026-06-22
政府が3年ぶりに原子力政策の指針を改定し、2040年までに最大550万kWの建て替え方針案を示した。

専門家の視点

政府が2040年に最大550万kW分の原子炉建て替えを掲げる一方、その数値は設備利用率70%や建設中炉の早期稼働など楽観的仮定に依存しており、実現性は不透明です。記事では「電力需要増」「地政学リスク」を背景に原子力の長期活用を前向きに語る一方、福島の教訓を「原点」と繰り返すことで安全議論を形式的に包含し、具体的な廃炉コストや事故リスクへの言及は省略されています。また、建て替え必要量を「不足量」と定義するフレーミングは、原子炉新設を前提としない選択肢(省エネや再エネ拡大)を暗に除外しており、比較基準の恣意性が疑われます。さらに、必要な設備容量は第7次エネルギーミックスの電源構成2割という仮定に基づくため、需要想定が変われば前提が崩れます。日本企業やGX人材には、政府の長期見通しに依存せず、不確実性を織り込んだ自社のリスク評価と技術ポートフォリオの分散が不可欠です。

政府は原子力政策の指針となる「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を3年ぶりに改定する方針だ。第49回「原子力小委員会」では今後の建て替えの計画など、改定内容の素案が公開された。 現行の「今後の原子力政策の方向性と行動指針」は、第6次エネルギー基本計画等を踏まえ、2023年4月に策定されたものである。その後、データセンター等による電力需要の急増や、中東情勢等の地政学リスクの高まりによるエネルギー安全保障の重要性が一層増すなど、原子力発電を取り巻く環境は大きく変化している。 また、第7次エネルギー基本計画では「再エネ、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが必要不可欠」と記されたことを踏まえ、国は「今後の原子力政策の方向性と行動指針」を3年ぶりに改定することとした。 なお、「東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて、エネルギー政策を進めていくことが、エネルギー政策の原点」であり、福島の復興と東京電力福島第一原子力発電所の安全かつ着実な廃炉は政府の最重要課題であり、引き続き政府一丸となって必要な取り組みを進めていくことは、新たな行動指針でも堅持されている。 2023年の「今後の原子力政策の方向性と行動指針」は、第6次エネ基等を踏まえ、「再稼働への総力結集」など6つの柱により構成されていた。 今回の原子力行動指針改定では、6つの柱建てという基本構造は維持しつつ、再稼働が一定程度進んできたことなどを踏まえ、一つ目の柱の名称を「原子力を長期的に活用していく上での大前提」へと変更することとした。ただしその内容は、不断の安全性向上、立地地域との共生、国民各層とのコミュニケーションなど、従来の行動指針の内容から大きな変更はない。 また、既設炉の再稼働や次世代革新炉に共通して重要となる事業環境整備や人材の重要性を明確化するため、五つ目の柱の名称は「事業環境整備/サプライチェーン・人材基盤の維持・強化」へと変更された。 今回の行動指針の構成の大きな変化として、その前段に「原子力発電の見通し・将来像」が新設され、福島第一原発事故以降初めて、今後の原子力発電の具体的な設備容量等が示された。 今後、データセンター等の増設や産業の電化の進展等により、国内の電力需要は増加すると考えられている。第7次エネ基・エネルギーミックスでは、2040年度の発電電力量を1.1~1.2兆kWh程度と見込み、原子力発電は電源構成の2割程度と想定されている。 他方、運転期間を60年と想定する場合であっても、2040年までに約360万kWの既設炉が運転停止を迎え、次第に供給力を喪失していくと考えられる。 日本が今後も原子力を使用するという前提に立つ場合、長期にわたる原子力への投資判断や、人材の育成、サプライチェーンにおける事業の予見性確保、立地地域との共生を図る観点等から、定量的な原子力発電の見通し・将来像を国が示すことは有益と考えられる。 まず、2040年・2050年の発電電力量1.1兆~1.2兆kWhの2割を原子力で賄うと仮定する場合、その電力量は2,200億~2,400億kWhとなる。行動指針案では、原子力の設備利用率を70%と仮定しており、この場合、原子力の設備容量は3,588万~3,914万kWとなる(※必要設備容量A)。 次に、2040年・2050年時点で運転が想定される設備容量として、60年運転の認可済である原子炉8基(高浜1,2,3,4、美浜3、東海第二、川内1,2)のほか、複数の既設炉(敦賀2、泊1、柏崎刈羽1,2,5、浜岡3、島根2、以外の具体名は非公開)の60年運転を見込む。 建設中の3基(大間、島根3、東電東通)の運転開始時期は未定であるが、ここでは2030年4月に運転開始すると仮定し、設備容量に計上する。なお図3では、GX脱炭素電源法(改正電気事業法)に基づく運転期間の取扱い(事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限り、「60年」の運転期間のカウント除外を認める)は勘案していない。 これにより、運転可能な設備容量(※B)は2040年に3,365万kW、2050年に2,317万kWと試算される。また、大型炉1基当たりの設備容量は120万kW、同じく設備利用率70%と仮定する。 以上より、必要設備容量Aと運転設備容量Bの差分は2040年に約220万~550万kW(約2基~5基)、2050年に約1,270万~1,600万kW(約11基~14基)と試算され、これが「不足量」、つまり「建て替え必要量」として示されている。 小型軽水炉(SMR)の設備容量を1基当たり30万kWと仮定する場合、大型炉の4倍の基数が必要となる。 Copyright ITmedia, Inc. All Right

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