EUの排出量取引制度 欧鉄鋼大手が改革訴え(日刊産業新聞)
欧州鉄鋼大手がEUの排出量取引制度の改革を訴えている
専門家の視点
EU排出量取引制度(EU-ETS)が第4フェーズに入り、無償排出枠の段階的削減が鉄鋼業界に現実のコストとして重くのしかかっています。欧州鉄鋼大手が改革を訴える背景には、実体としての「競争力低下」と「域内生産縮小のリスク」があります。EU域外からの安価な鉄鋼輸入が増える一方、域内生産者は炭素コストを吸収しきれず、収益悪化が避けられません。ここでのズレは「物語先行」です。EUはグリーンディールの物語を掲げ、カーボンプライシングが技術革新を促進すると説明しますが、現実には商業規模の低炭素鉄鋼技術(水素還元製鉄など)は2030年以降の実装が想定され、時間軸が合っていません。さらに、執行面の非対称性として、排出枠購入コストは今すぐ発生する一方で、補助金や国境炭素調整措置(CBAM)の運用開始は遅れています。鉄鋼大手は「今支払っているコストを、いつ回収できるのか」という実行レイヤーの欠落を指摘しているのです。業界が訴える改革の本質は、脱炭素投資への橋渡し措置を求めることであり、単なる規制緩和の主張ではありません。