ISSB議長の「ESGの時代は終わった」発言をどう受け止めるべきか
ISSB議長が「ESGの時代は終わった」と発言した意図と、サステナビリティ開示実務への影響を考察
専門家の視点
ISSB議長が「ESGの時代は終わった」と述べた背景には、サステナビリティ情報開示の基準作りを主導する立場として、ESGという曖昧な総称ではなく、投資家が意思決定に使える具体的な開示基準へ移行するという強い意図があります。ここで起きているのは、実体と物語のズレです。実体として、IFRSサステナビリティ開示基準(S1・S2)は既に公表され、日本でも2024年から有価証券報告書への記載が始まっています。しかし、物語としては「ESG終了」という強いフレーミングが先行し、市場や企業に「もうESGは不要」という誤った期待を生むリスクがあります。実際には、開示の厳格化と審査体制の整備はこれからであり、人材・システム・監査の実体が追いついていないのが現状です。隠れた前提は「開示基準の統一=企業行動の変容」という楽観視です。基準が整っても、それを実行する企業側のガバナンスやサプライチェーンの実態開示は別の課題として残ります。この発言の構造は「実体の成熟を待たずに物語が走りすぎた」典型であり、次の観測点は各国の規制執行の現実と開示の質のばらつきです。