サステナブルリポート/ANA・JAL 脱炭素の現在地
ANAとJALの脱炭素への取り組みの現状を報じている。
専門家の視点
SAF(持続可能な航空燃料)導入目標と国際的な排出権取引制度の進展という、二つの異なる時間軸を持つ課題が同じ記事内に並記されています。ANA・JALが2030年に全燃料の10%をSAFに切り替える目標は、現行のSAF生産能力や供給価格を考慮すると極めて野心的であり、物語先行の構造と言えます。一方で、国際民間航空機関(ICAO)のCORSIA制度は2027年から本格的な義務化が始まるため、実体として迫りつつある規制です。ここでの隠れた前提は「航空需要が現状維持または増加する」という暗黙の仮定です。もし旅客需要が減少すれば、排出総量を削減できるためSAF導入の緊急性は低下しますが、現在の議論は需要拡大を当然視しています。さらに、現在の技術ではSAFの大量生産に必要な原料調達やコスト競争力が確立しておらず、そのギャップがどこで解消されるのかという実行レイヤーが不明瞭です。観測点としては、両社がいつまでに具体的なSAF調達契約を結び、どの程度の量を国内生産で賄うのかを示すかが次なる判断材料です。この構造は、国際規制の実体に対して、企業と市場の期待が先行している典型的なパターンです。