企業動向

水素、物流、働き方の3テーマを実践へ 自工会「新7つの課題」進捗報告

2026-06-19
日本自動車工業会が水素、物流、働き方など新7つの課題の取り組みを実践段階へ進めていると報告した内容

専門家の視点

自工会の「新7つの課題」進捗報告は、複数の具体的事実と長期目標を並べていますが、そこには構造的な非対称性があります。実体として確かなのは、完成車の復路活用シミュレーションや補修品の試験的共同物流、カレンダー変更の2027年度開始という、着手可能な小さなステップです。一方、物語は「業界一体」「抜本的課題解決」「選ばれる産業」と大きく描かれますが、肝心の「誰が実行するか」の実行レイヤーが曖昧です。特に部品・素材の共通化は「議論しているところ」と留まり、自動車総連との協議は始まったばかりで、サプライヤーや協力会社の実務負担・収益構造への影響は未検証です。物流データ連携のプラットフォーム構築は2028年末と時間軸が長く、その間に各社の競争戦略や投資判断がどう整合するかの仕組みは示されていません。ここでの隠れた前提は「業界全体の協調が可能であり続ける」ことですが、脱炭素と競争力の両立を迫られる自動車産業で、協調と競争の境界線が今後も維持される保証はありません。

国の基幹産業としての魅力向上と共に、日本の経済成長を支えていく。日本自動車工業会が掲げる「新7つの課題」の取り組みが実践の段階へ。 国の基幹産業としての魅力向上と共に、日本の経済成長を支えていく。日本自動車工業会が掲げる「新7つの課題」の取り組みが実践の段階へ。 2つ目は、サプライチェーン全体での競争力向上における「共同物流実装に向けた標準PF(プラットフォーム)構築」ついて。物流部会の永野岳人 部会長(ホンダ)、吉田晃朗 副部会長(トヨタ)が報告した。 吉田副部会長は「資源が少ない」「自然災害が多発」「労働人口が減少」という日本の課題を乗り越え、経済成長を支える物流構築の必要性を強調。 3月の理事ミーティングで話題に挙がった「完成車の共同物流」については、現状A社の完成車をトラックで販売店や保管庫に届け終えた後、帰り道は積荷がなく輸送のムダが発生しているという課題がある。 この復路でB社の完成車を載せ、トラックを往復で最大活用することが「完成車の共同物流」だ。 共同物流を実現するうえでは、各社の工場や販売店の位置、トラックの配送ルートや現在地などのデータ連携が最重要課題となる。 吉田副部会長は「使っていない逆物流(復路)を他のメーカーに使ってもらうショーケースを完成車物流でつくっていきたい」と話す。現在は、各メーカーの物流データを使ったシミュレーションを実施中で、今年夏ごろを目途に共同の範囲やステップを決めていくという。 三部敏宏 副会長(ホンダ)は、記者からの質問に答える中で、次のように語っている。 現場レベルの話でいうと、固縛(完成車をトラックの荷台に固定するやり方)も各社でバラバラです。まずは足元の部分として、どのメーカーのクルマでも同じトラックに積めるよう、そのような部分から合わせていくことから始まります。 説明したように、過去のデータを集めてシミュレーションすれば、どのくらい完成車物流の効率が上がるかが分かります。データを集約して仕組みをつくるには時間がかかるため、2028年末を目処にシステムを構築したい。 サプライチェーン全体での競争力向上のもう一つの取り組みである、部品・素材の共通化については「議論しているところ」とした。 また、完成車と並行して補修品の共同物流も試験的に開始。いすゞ自動車の帰り便を活用し、トヨタの補修品を輸送する協業が行われている。 3つ目は、人材基盤の強化における「産業の魅力向上に向けたカレンダー変更」について。 この場合の「カレンダー」とは、自動車産業で通例とされている勤務形態を指す。 祝日も稼働する代わりに、その分の休日をゴールデンウィーク(GW)や年末年始などの長期連休の前後に移動させ、大型連休にするという働き方だ。 従来は、工場が停止するこの大型連休の間に大規模な設備の導入やラインの改修を行っている。 こうした働き方は、家族との予定も合わせにくく、価値観や生活スタイルが多様化している昨今では自動車産業離れの一因にもなっている。 自工会は今回、このカレンダーの見直しに動くと発表。2027年度より、5月のGW前後や連休の間にある平日を稼働日に。これまで稼働日だったハッピーマンデー*の一部を休日化していくという。*日本の祝日の一部を月曜日に移し、土日とつなげて3連休にする制度。1月の成人の日、7月の海の日、9月の敬老の日、10月のスポーツの日が該当。 自動車産業で働く意欲を高めるための対応だが、祐川浩之 人財部会長(ホンダ)は、生産性向上も併せて進める必要があると強調した。 日本の基幹産業である自動車産業の魅力を高め、将来にわたって選ばれる産業へと進化させていく必要があります。それに向けて「新7つの課題」への取り組みによる抜本的な産業課題の解決と併せ、業界一体となった働き方改革を推進し、生産性向上を実現しなくてはならないと思っています。 働き方改革については、働く人々の変化、価値観の多様化といった社会の流れに対し、自動車産業として多様な働き方をつくり出していく流れをスタートさせたいです。 その第一歩として、2027年度は、これまでGW前後に集中していた工事や設備対応、切り替え作業を平準化することにチャレンジしたいと思っています。この平準化により、工事・設備関連の協力会社の工事計画の安定化や人員手配の効率化、中長期的な人員確保・育成につながる効果も期待しています。 カレンダー見直しによるサプライヤーや関係会社への影響については、すでに自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)とも協議を重ねており、今後、関係団体への丁寧なヒアリングや理解活動を行っていくともコメントした。 記者からは「総量として休日数自体は増えていないと思うが、何年後か先に増えていく予想図はあるのか」という質問が出た。 こ

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