【EU】改正FDI審査規則、成立。重要セクターに対しEU共通審査プロセス設定。経済安保
専門家の視点
EU加盟国を通過した海外直接投資について、加盟国段階の審査とは別にEU共通の審査プロセスを設ける改正FDI審査規則が成立しました。対象となるのは重要セクターへの投資で、特定の投資家の関与をEU全体で監視する仕組みです。 ここで見逃せないのは、実体として「加盟国が個別に審査する制度」は既に存在していたという点です。今回の改正は、その上にEU共通の審査プロセスを重ねる二層構造にするという意味で、制度の追加に当たります。しかし、この制度を実際に執行する人員やデータベースの整備、審査期間の調整といった運用体制はまだ明確ではありません。物語として「経済安全保障の強化」は強く打ち出されていますが、誰がどのように審査を回すのかという実行レイヤーが不足しており、実体が物語に追いついていない状態です。 また、この共通審査が企業の投資判断に与える影響は非対称的です。EU外の企業にとっては審査の不透明性が増す一方、EU域内のスタートアップや研究機関は、資金調達の選択肢が狭まるリスクを負います。制度の導入は早いが、執行と人材が追いつかない典型的なパターンがここに表れています。
EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会は6月8日、経済安全保障の観点から、改正海外直接投資(FDI)審査規則を採択した。同EU規則はすでに欧州議会を通過しており、同EU規則は成立した。EU官報掲載の20日後に発効し、発効から18ヶ月後に適用が開始される。 【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、海外投資の審査厳格化で政治的合意。AIや決済システムも。経済安保(2026年1月6日) 今回の改正EU規則は、現行の審査枠組を土台とし、全EU加盟国が実施すべき最低限の審査範囲を義務付け、EU子会社を通じた海外からの投資も対象に含められる。また各国制度間の一貫性を高め、投資家の行政負担を軽減するとともに、外国投資による越境的な安全保障上の影響の可能性が審査されるようになる。 具体的には、最低限の共通審査対象として、軍民両用(デュアルユース)物品・軍事装備品。超重要技術(AI、量子テクノロジー、半導体等)、重要原材料、エネルギー・運輸・デジタルインフラ分野の重要事業者、選挙インフラ(有権者データベース、投票システム、選挙管理システム等)に加え、金融システム関連事業体の限定リストとして、中央清算機関、中央証券保管機関、規制対象市場運営者、決済システム運営者(中央銀行を除く)等が挙げられている。 審査手続では、審査決定はEU加盟国の専権事項であることを再確認し、投資の認可、条件付認可、禁止の決定において完全な裁量権を持つことを明確化。但し、各EU加盟国当局と欧州委員会間の透明性と調整についても整理した。また、他のEU加盟国からの意見や欧州委員会の見解が提出された場合、審査を実施するEU加盟国は、機密性の高い国家安全保障上の考慮事項を損なうことなく、これらをどのように考慮したか(意見が一致しなかった理由を含む)を説明する責任を負うこととなった。 EU加盟国間の相互運用では、迂回防止のための新たなEU加盟国共有データベースを構築し、海外投資の電子申請のための任意の単一窓口を9加盟国以上が要請した場合に設置。海外投資評価におけるリスク要因の明確化も盛り込まれている。 【参照ページ】Foreign investment screening: Council signs off on updated framework ※ 閲覧チケットは翌月への繰り越しはできません。 【無料会員向け】有料記事の閲覧チケットの詳細はこちら 株式会社ニューラル サステナビリティ研究所
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