米マクドナルド、30年のGHG削減目標は「達成できない」と公表した狙い
専門家の視点
米マクドナルドがスコープ3の削減目標未達を公表した背景には、サステナビリティ情報開示の厳格化と投資家の実現可能性重視の視線があります。スコープ1・2は順調に進む一方、総排出量の99%を占めるスコープ3は外部要因(電力需要増加、地政学リスク)と農業分野の構造的課題を理由に、企業単独では解決困難としています。この公表は、従来目標を掲げ続ければグリーンウォッシュとみなされるリスクを回避し、むしろ透明性で信頼を得ようとする戦略と読めます。しかし、課題の原因を電力需要や業界全体・政策支援へ拡散する「主語の曖昧化」がみられ、農家やサプライチェーン事業者の具体的な負担や利害は省略されています。2050年ネットゼロ目標は維持する一方、短期目標の未達を「構造的問題」と位置づけることで、自社の直接責任を相対化するナラティブが構築されています。日本企業・GX人材は、目標未達を隠さず開示する誠実さが中長期的な評価につながる可能性と、その際に責任を外部に転嫁せず自社の課題として捉える姿勢の両立が問われているでしょう。
米マクドナルドはこのほど、2030年に向けて掲げていた温室効果ガス(GHG)排出削減目標のうち、「スコープ3」の削減目標について、当初の計画通りには達成できない見通しを明らかにした。企業が脱炭素目標の未達見通しを公表するのは珍しい。その狙いとは。(オルタナ輪番編集長=池田真隆) マクドナルドが脱炭素目標の未達見通しを公表した背景には、近年強まるサステナビリティ情報開示の厳格化や、実現可能性を重視する投資家の視線があるとみられる。 マクドナルドは5月に公表した声明の中で、店舗運営などに由来するスコープ1・2のGHG排出量については、再生可能エネルギーの導入や店舗の省エネ化によって2030年目標を上回るペースで進捗していると説明した。包装材についても、2025年末時点で顧客向け主要包装材の95.8%を再生可能素材、再生材、認証材に切り替えたとした。 一方で課題は、サプライチェーンを含む「スコープ3」だ。フランチャイズ店舗、農業、畜産、原材料調達、物流など、サプライチェーン全体から発生する排出量は、同社の総排出量の99%を占める。 マクドナルドは「スコープ3のGHG削減には企業単独では解決できない構造的な課題がある」とした。世界的な電力需要の増加によって、再生可能エネルギーの導入速度を上回る地域が増えたことに加えて、地政学的リスクの高まりがサプライチェーンに深刻な影響を与え始めた。 特に農業分野では、農家による再生型農業への移行や土地利用の改善が不可欠だ。しかし、これらは単一企業が指示するだけで実現できるものではなく、政策支援や業界全体の連携が求められる。 ■従来目標を掲げればグリーンウォッシュに■2050年「ネットゼロ」目標は変えない■政策面での強力な「後押し」を訴え 株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。
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