ZEB化設計指針を策定/脱炭素化とLCC縮減両立/北九州市 - 建設通信新聞
専門家の視点
北九州市のZEB化設計指針は、統合型デザインフロー導入により初期段階から建築と設備が連携し、脱炭素化とライフサイクルコスト削減の両立を図る点が実体です。ただし、2050年のストック平均BEI0.65という長期目標以外に中間目標が示されず、2027年度適用開始という先送り感があります。また「原則として市営住宅を除く」「一律の強制ではなく柔軟な判断」という但し書きは、ガイドラインとしての実効性に疑問を残し、目的(脱炭素化)と手段(19項目の原則採用)の間に緩みが生じる可能性があります。比較基準として「従来設計」への言及はあるものの、具体的なベースライン数値がなく、財源創出の規模や誰のコスト削減か(市財政かテナントか)も曖昧です。酷暑や老朽化という課題への対処として語られる一方、例外事項が多く語られることで、真の削減効果が過大評価されるリスクがあります。日本企業・GX人材は、こうした自治体のガイドラインを鵜呑みにせず、現場の柔軟性に甘えることなく定量的なKPIと検証プロセスを自ら組み込む姿勢が求められます。
北九州市は、「市有建築物のZEB化設計指針」を策定した。意匠決定後に設備設計を行う従来の手続きを改め、設計の初期段階から建築と設備担当が連携する「統合型デザインフロー」を導入する。脱炭素化とライフサイクルコスト(LCC)縮減の両立を図ることで、施設の老朽化対策の新たな財源創出を目指す。2027年度の設計案件から適用する。 近年、酷暑によるエネルギー消費の増加や老朽化建築物の維持・更新費確保が課題となる中、意匠を優先した従来の設計では財源確保と脱炭素化を両立させることが困難になっている。このため、建築と設備の仕様を比較し、最も経済性と環境性能に優れた仕様を決める。 原則として市営住宅を除く全ての市有建築物の新築と、外壁・防水や空調・照明設備など省エネルギー性能に大きく関わる部位の改修を対象とする。PFIなど官民連携事業にも適用する。 新築時は「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) Oriented相当以上」を達成し、外皮の高断熱化や日射の最適制御など、指針に定めた19項目のZEB化手法を原則全て採用する。既存建築物の改修では、施設の統廃合を予定していたり、残存使用期間が不確定だったりする場合、段階的改修のLCC試算などを実施し、最も有利な項目を採用する。 パッシブデザインの徹底による熱負荷の低減を促すため、新築時の開口部はアルミサッシや単板ガラスの採用を原則不可と規定した。基準は一律の強制ではなく、現場の柔軟な判断を尊重し、各プロジェクトの特性に合わせて最適解を導くガイドラインとして位置付ける。 指針には、各手法の仕様基準のほか、運用者への設計意図の伝達やBEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)による性能検証といった全建物共通の事項を記載している。 今後のロードマップとして、既存ストックを含めた2050年のストック平均BEI(省エネ性能)0.65を目標に掲げた。
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