サステナブルリポート/ANA・JAL 脱炭素の現在地 | 日刊工業新聞 電子版
ANAとJALの2050年までの航空輸送におけるCO2排出実質ゼロに向けた取り組みの現状を報じている。
専門家の視点
航空業の脱炭素は、持続可能な航空燃料(SAF)の普及なくして成立しないという点で、技術的実体と社会の期待の間に構造的なズレが存在します。ANAとJALが2050年のCO2排出実質ゼロを掲げる一方で、SAFの供給量は現状、全世界の航空燃料需要の1%にも満たず、生産コストは従来燃料の3~5倍です。ここには「物語先走り」の構造が明確に表れています。両社のビジョンは壮大ですが、実体としてSAFの大規模生産やコスト低減の具体的な道筋、さらには政府による補助や規制の枠組みが不可欠です。また、「誰が実行するのか」という実行レイヤーも曖昧です。航空会社はSAFの購入意向を示すことはできても、生産そのものは石油メーカーや新興バイオ企業の領域であり、両社単独での実現は困難です。この隠れた前提として、「航空会社の努力で脱炭素が達成できる」というフレーミングが問い直されるべきです。実際には、国際的なSAFの義務化や炭素価格の導入など、制度的な後押しが無ければ、ビジョンは絵空事に終わります。期待先行の状態を解消するためには、コスト競争力の見える化と長期契約の積み上げが、次に見るべき観測点です。