制度・政策

改正GX推進法で変わる排出量取引と、食品事業者が取るべき3つの対策 | フーズチャネル

2026-06-08
2026年4月の改正GX推進法施行に伴い、大企業を中心に排出量取引制度が義務化され、直接の対象外となることが多い食品事業者への影響と対策を解説する記事。

専門家の視点

改正GX推進法の記事は、排出量取引の義務化対象が約300~400社の大企業に限られる一方、食品事業者にはサプライチェーン開示要請と化石燃料賦課金という2経路で影響が及ぶと指摘します。しかし、ここに「規模と効果のギャップ」が潜んでいます。対象外の中小企業に具体的なコスト上昇率やデータ開示の厳格な期限が示されず、影響の実体が曖昧なまま対策の必要性だけが強調されています。また、「取るべき3つの対策」と謳いながら本文では2つしか説明されておらず、読者の期待する具体的行動指針と記事の内容にズレが生じています。さらに、「法改正の転換点」と語る一方で、目標年度(2028年度賦課金導入など)と現時点の実行可能性の距離感が省略され、時間軸が操作されている印象も否めません。省略された利害関係者は、中小事業者の現場負担や代替燃料への移行コストであり、誰の利益(制度の円滑な運用か、削減達成か)が優先されるかが不明瞭です。日本企業・GX人材は、規制の表面的な動向だけでなく、自社のサプライチェーンにおける排出量データの実質的な管理基盤を早期に構築し、制度の目的と手段の倒錯を見極める視点が不可欠です。

2026年4月の改正GX(グリーントランスフォーメーション)推進法施行に伴い、大企業を中心に排出量取引制度が義務化された。直接の対象外となることが多い中小の食品工場や配送卸であっても、取引先からのデータ開示要請や2028年度に導入される化石燃料賦課金によるエネルギーコスト上昇という2つの経路から大きな影響を受ける。法改正の全体像と食品事業者が着手すべき対策を解説する。 改正GX推進法は何を目的とし、4月から何が義務化されたのか。まず法律の趣旨と、新たに義務となった排出量取引制度の枠組みを整理する。 改正GX推進法は、2050年の脱炭素社会へ向けて、企業の排出削減と投資を後押しする法律である。正式名称を「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」という。 2023年に成立し、2025年の改正で制度設計が大きく前進した。2023年の制定時、排出量取引は「GXリーグ」への自主参加にとどまっていた。2025年の改正では、これを大量排出企業に対する法的な義務へと切り替えた点が、実務上の大きな転換点である。 主な変化は次のとおりである。 経済産業省によると、同制度は2026年4月1日に本格稼働している。 排出量取引制度とは、対象企業ごとにCO2排出量の上限(排出枠)を定め、排出枠を企業間で売買できるようにする制度である。 削減が進んで枠に余裕が生じた企業は、余剰分を他社へ売却できる。一方、枠を超過した企業は不足分を購入して補う必要がある。削減努力が経済的な利益に直結し、対応が遅れるほど負担が増す構造といえる。 排出量取引制度の仕組みにより、国全体の排出量を計画的に抑制していく予定だ。ただし全企業が一斉に対象となるわけではなく、排出規模の大きい事業者から順次適用される。 排出量取引制度の義務が課されるのは、CO2の直接排出量が直近3年度の平均で年10万トン以上の事業者である。直接排出とは、自社の工場や車両で重油・ガス・軽油などの燃料を燃焼させて生じるCO2を指し、購入した電力の使用にともなう間接的な排出は、この基準には算入されない。 経済産業省は、基準に該当する事業者を全国で約300社~400社と見込む。電力、鉄鋼、セメント、石油元売り、自動車など、燃料を大量に消費する業種が中心である。対象となる約300~400社だけで、国内の温室効果ガス排出量の約6割を占める。 対象となる大量排出企業は2026年度に排出量を計測し、翌2027年度に排出実績を報告して、保有義務を履行する流れとなる。年10万トンは大規模な装置産業に相当する水準であり、一般的な食品工場や卸売がこれに達することは想定しにくいといえる。 食品事業者は脱炭素政策とどう向き合うべきか。自社が義務の対象となるかを確認したうえで、対象外であっても経営に影響が及ぶ理由を整理する。 すでに述べたとおり、義務の基準は装置産業を想定した水準にある。ボイラーや配送車両で燃料を用いる食品工場や配送卸が、これに達することはほとんどないといえる。 そのため、2026年4月の段階で、排出枠の取得や国への報告を直ちに求められるわけではない。まず確かめたいのは、自社が義務の対象に当たるかどうかである。立ち位置を正しくつかんでおけば、過剰な対応や、無関心による出遅れを避けやすくなるだろう。 ただし、対象外であることは、対応が不要であることを意味しない。義務が課されなくとも、食品事業者には別の経路から影響が及ぶからだ。 1つは、取引先である大企業からの排出量データの開示要請。もう1つは、化石燃料賦課金を起点とするエネルギーコストの上昇である。 いずれも、改正GX推進法を含む脱炭素政策の進展にともなって生じる構造的な変化だ。以下、それぞれを具体的に見ていく。 第一の影響は、取引先からの開示要請である。上場する大企業は、自社が排出するCO2に加え、取引先全体の排出量を把握するよう求められている。 環境省は、サプライチェーン排出量の算定方法をガイドラインとして公開している。大手の食品メーカーや小売は、これに基づき自社グループ全体の排出量を集計する。そのため、納入元である食品工場や配送卸に対し、排出量データの提供と削減への取り組みを求め始めている。 さらに金融庁は、こうした情報の開示(Scope1、2等)を、プライム市場上場の時価総額3兆円以上の大企業について2027年3月期から義務づけ、サプライチェーン排出量(Scope3)についても段階的に開示を迫る方針だ。開示義務を負う企業が増えるほど、取引先への要請も裾野を広げていく可能性が高い。要請を受けた際に自社の数値を示せるかどうかが、取引の継続を左右する要素になるだろう。 (参考) 時価総額3兆円以上の主な食品事業者:セブン アイ、味の素、イオンなど(2026

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