再エネ・技術

和倉の温泉熱活用に追い風 環境省が脱炭素の「先行地」に 旅館に温水供給 七尾市、予算計上

2026-06-07
七尾市和倉温泉の温泉熱を活用した脱炭素プロジェクトが環境省の「先行地域」に選定され、旅館への温水供給事業に市が予算を計上した

専門家の視点

環境省が和倉温泉を「先行地域」に選定したことは、温泉熱という地域固有の未利用エネルギーを脱炭素に結びつける実体として評価できます。しかし、物語に注目すると、選定されたこと自体が目的化しており、温水供給によって具体的にどれだけの二酸化炭素削減が達成されるのか、そのKPIが記事からは見えません。旅館への供給開始時期や事業の採算性も不明で、実行レイヤーが七尾市に一元化されている点も懸念です。旅館ごとに温度や流量の異なる温泉熱を一括で制御するには、現場の運用ノウハウを持つ旅館組合との連携が不可欠ですが、その体制が描かれていません。期待先行の構造で、まずは選ばれたことに価値があるとして予算が動いています。ここで問い直すべきは、温泉熱の利用が脱炭素の「銀の弾丸」と見なされている前提です。温泉熱は安定している一方で、熱源が地下であるがゆえに取水量の増加が温泉資源自体の枯渇リスクとトレードオフになる可能性があります。持続可能性は脱炭素と資源保全の両立にかかっており、後者の視点が欠落しています。次の観測点は、この事業が温泉資源のモニタリング計画を伴っているかどうかです。

能登半島地震で甚大な被害を受けた和倉温泉。温泉熱を活用するプロジェクトを進めている=七尾市内 七尾市和倉温泉の熱活用プロジェクトが、脱炭素化の「先行地域」を支援する環境省の事業に採択された。温泉の熱で温めた水を各旅館のシャワーなどに使用し、燃費負担の軽減につなげる取り組みで、採択を受け、市は6月補正予算案に事業費として国からの交付金5220万円を計上する。事業主体の和倉温泉創造的復興まちづくり推進協議会などが今年度、実施設計に着手する方針だ。 和倉温泉の温泉熱を活用するプロジェクトは、旅館の若手経営者らでつくる同協議会や北陸電力などが連携して進めている。温泉を熱源に熱交換器などを使って温水をつくり、各旅館に供給する事業となる。 環境省は政府目標に先駆けて2030年度までの脱炭素化に取り組む「先行地域」として石川県を選定。このプロジェクトが支援対象となった。能登半島地震で甚大な被害を受けた和倉温泉の旅館の再建を後押しする狙いがある。 実施設計の総事業費は6960万円。国の交付金が4分の3の5220万円で、残りの4分の1は地元負担となる。計画では27年度に工事に着手し、29年度から各旅館への供給を始めることを想定する。 和倉温泉では同温泉旅館協同組合に加盟する19軒のうち、9軒が営業を再開している。全旅館がおおむね再開するのは28年度とされている。地元ではこのプロジェクトで「環境に優しい温泉地」として復興のモデルを目指し、誘客を図りたい考えだ。

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