再エネ・技術

ナフサ不足の救世主?欧米で実用化する「合成ナフサ」とは | 環境エネルギー最前線 | 川口雅浩

2026-06-06
欧米で実用化が進む、水素とCO2から作る合成ナフサ(eナフサ)の動向を解説する記事。

専門家の視点

合成ナフサ(eナフサ)の実用化を伝える記事ですが、その「実用段階」は欧米の限定的な事例であり、記事内で示された首相の発言からも日本国内の供給不安が継続している実態が浮かび上がります。ここには「規模と効果のギャップ」というズレがあります。記事は合成ナフサを「脱石油の切り札」と希望的に語る一方で、実際の流通量やコスト競争力、生産規模についての具体的な数値が一切示されていません。また、首相が「年を越えて可能」から「年度を越えて可能」と言い換えた時制の操作も、政府見解と現場感覚の乖離を反映しています。合成ナフサが本当に救世主となるには、大量生産と価格低減という越えるべきハードルがあり、現時点ではその道筋は不明瞭です。日本企業とGX人材は、合成燃料技術の将来性に期待しつつも、中東依存からの脱却には短期的な安定調達と長期的な技術実装を同時並行で進める現実的な戦略が求められます。

中東情勢の影響でナフサ由来のインキの調達が不安定だとして、白黒になった菓子の包装。ナフサの供給不安は続く=東京都内で2026年6月2日、和田大典撮影 日本の中東依存が残した教訓(7) 中東情勢の悪化に伴うナフサの供給不安が問題となっている。プラスチックなどナフサ由来の石油化学製品について、政府は「供給量は足りている」と説明するが、民間企業は先行き不安を指摘する。即座に問題の解決とはならないが、水素や二酸化炭素(CO2)から合成ナフサ(eナフサ)を作ることは今も可能で、将来的に「脱石油の切り札」になるという。どういうことか。 「さまざまな現場で目詰まりが起きている。足りているはずのナフサが届いてない。そういった状況も十分に把握している。現場のお店であったり、一人親方の工務店であったり、こういったところに目が届かなきゃいけない。しっかりとその対応に取り組んでいく」 高市早苗首相(自民党総裁)は5月20日、今国会初の党首討論で、ナフサをめぐり政府の見解と民間の認識が異なることを認めた。供給不安だけでない。原油由来のナフサ価格の上昇で、ポリ袋や食品トレーなどさまざまな石油化学製品が高騰している。 さらに首相は6月2日、中東情勢に関する関係閣僚会議で、ナフサ由来の化学製品の供給について「年度を越えて可能となる」と明らかにした。首相は4月末には「年を越えて可能となる」と説明していた。ナフサの供給について、国内での精製や代替調達などにより「従来の85%の水準まで回復した」と発言したが、まだ正常化には至っていない。 日本が石油依存、とりわけ原油の中東依存を深めてきた結果ともいえるが、将来的には明るい希望がある。これまで本欄でリポートしてきた「e-fuel(イーフュエル)」などの合成燃料と同様の技術で、水素やCO2から石油代替のプラスチック原料(合成ナフサ、eナフサ)を製造することができるという。しかも、海外で流通量は限られるが、既に実用段階にあるようだ。 本欄の第5回でリポートした米スタートアップの「Infinium(インフィニウム)」社は「当社のeナフサは原油由来のナフサの代替として使用できる。医療機器から食品容器までプラスチック製品の製造に使える」としている。同社に確認したところ、e-fuelもeナフサも合成燃料としては同じで、見た目も変わらないという。 インフィニウム社はオーストリアのウィーンに本社を置く石油化学メーカー「Borealis(ボレアリス)」社(当時、現在は「Borouge International(ボルージュ・インターナショナル)」社)に商用規模のeナフサを2024年に初出荷した。ボレアリス社は欧州はもちろん、世界でも脱炭素に取り組む先進的な石油化学メーカーだ。 1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。

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