再エネ・技術

水素を常温・常圧で液体化、新型水素キャリアを実証 - メガソーラービジネス plus - 日経BP

2026-06-04
水素吸蔵合金の微粉末を液体内に分散させる技術により、水素を常温・常圧で液体化する新型水素キャリアの実証が行われた。

専門家の視点

水素吸蔵合金を液体に分散させるという技術は、水素を高圧や極低温にせずに扱える可能性を示しており、実体として水素輸送のコストや安全性に変化をもたらしうるものです。しかし、記事からはその実証の規模やエネルギー効率、合金の耐久性といった実用化に不可欠なデータが示されておらず、物語(実証成功というフレーム)が先行している状態です。現時点では、実験室レベルの成果が社会実装に結びつくまでの時間軸やコスト競争力が不明瞭であり、期待(水素社会への楽観)が実体を追い越している構造といえます。見落とせないのは、「誰がこの技術をスケールアップして運営するのか」という実行レイヤーが欠落している点です。水素吸蔵合金自体は古くから研究されながら、コストと劣化の問題で普及してきませんでした。この技術がその壁を突破できるかは、実証後の数値に基づいて評価されるべきであり、現時点での物語先走りを警戒する必要があります。次の観測点は、2025年以降のパイロット規模での実証結果と、システム全体のライフサイクルコストの開示です。

蓄電池関連ベンチャーのARM Technologies(エーアールエム・テクノロジーズ、相模原市)は6月2日、アイシン、東京大学先端科学技術研究センターと共同で、太陽光発電で生成したグリーン水素を、同社が独自開発した「液体水素キャリア」に充填し、安全に運んで利用する新エネルギーシステムの実証実験に成功したと発表した。 液体水素キャリアは、水素吸蔵合金の微粉末を液体内に分散(懸濁)させた「水素吸蔵合金スラリー」になる。常温常圧の液体状態で不燃性のため、高圧ガス・危険物・劇物には該当せずポンプで移送できるという。実証では簡易なポリプロピレン容器に貯蔵し、トートバックで運搬した。 太陽光パネルが発電した電力から水素を液体キャリアへ直接貯蔵でき、液体キャリアを放電セルに注入することで直接発電できるため、高効率な水素運搬が可能という。従来のアンモニアやMCH(メチルシクロヘキサン)など安定的な化学物質に水素を変換する方法ではキャリア変換や脱水素によるエネルギーが必要になり水素製造から発電までのエネルギー効率は20〜30%に留まるが、今回の技術では60%以上の高効率が期待できるという。 同社が開発する新型液体電池と同じ技術になる。新型液体電池は、燃料電池の正極技術と、ニッケル水素電池の負極技術を組み合わせたもので、負極側の水素吸蔵合金スラリーにエネルギーを貯蔵する仕組み。 実証では、相模原市のさがみはら産業創造センターでグリーン水素を生成し液体水素キャリアへ充電し、東京大学駒場キャンパスまで運搬して発電燃料として利用した。運搬回数は5回、総水素利用料は0.69Nm3(総発電電力量1.2kWh)、運搬した液体水素キャリアの総体積は3.27Lで、キャリア1Nm3あたり210.2Nm3の水素を貯蔵・運搬した。水素製造から発電までのエネルギー効率は45.2%だった。実証期間は2月21日〜3月27日。 同社によると、現在の課題としてセルスタックの小型化(高出力密度化)、セルスタック量産技術開発、耐久性確認などがある。2027年中にこれらの課題を解決し、2028年にコンテナ型のMW級システムを製造し、再生可能エネルギーに接続した大規模実証を実施する。2030年以降に商用化、2035年以降に電気自動車(充填のみ)、2040年以降に国内で製造した電気(水素充填済み液体水素キャリア)を海外に輸出し日本をエネルギー輸出国とすることを目指すという。 Copyright 2026 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved. このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。著作権は日経BP、またはその情報提供者に帰属します。 掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

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