米上場企業の気候リスク開示規則が撤廃へ 証券取引委員会が提案 - 日経BP
米証券取引委員会が上場企業の気候リスク開示規則の撤廃を提案した。
専門家の視点
気候リスク開示規則の撤廃提案は、実体としての気候変動リスクと、それを制度に翻訳しようとした物語との間で、大きなズレが生じた結果です。実体は、異常気象や規制変更が企業収益に影響を与える物理的・移行的リスクが既に顕在化していることですが、物語としての開示義務化は、そのリスクを投資家に伝えるための手続きでした。ところが、この物語が執行面での負担や政治的な反発という期待のブレーキに直面し、撤廃という形で実体から切り離されました。 ここでの構造的論点は、開示規則が「誰が実行するのか」という実行レイヤーを明確に描けなかった点にあります。規則の導入は速かったものの、企業側のデータ収集体制や監査人の確保が追いつかず、制度と現場の非対称性が露呈しました。また、この提案が当然としている前提は「気候リスク開示は不要である」という解釈ですが、別の見方として、開示が無くなれば市場はリスクを適切に価格に反映できず、資本配分の歪みが生じる可能性があります。 時間軸で見れば、規則撤廃が可逆か否かは政治情勢次第であり、投資家の期待は現時点で萎縮していると言えます。