排出量算定

「4つのステートメント」が変える排出算定・開示-GHGプロトコル「行動と市場手段」(AMI ...

2026-06-01
GHGプロトコル「行動と市場手段」の改訂により、算定方法や開示要件が変わり、低炭素素材へのグリーンプレミアムが脱炭素投資に活用される好循環が期待されるという内容

専門家の視点

GHGプロトコル改定のAMIホワイトペーパーは、現行の物理的インベントリー中心の算定では捉えきれない低炭素素材やカーボンクレジット等の市場手段を正式に位置づけようとする実質的な動きです。ただし記事は、まだ基準草案ではなく意見募集段階であると注意喚起しており、現時点では将来のルール形成に向けた方向性を示すに過ぎません。Narrativeとしては「企業の脱炭素努力が適切に評価されない不満」を軸に、改定の必要性を強調する一方、日本企業に対して「大筋が固まる前のコメントが重要」と行動を促すフレーミングがなされています。読者や業界は、より柔軟で評価可能な枠組みを期待していますが、実際の基準完成は2028年末、完全実施は2030年頃と長期的であり、その間のルール不確実性が企業の投資判断に影響する可能性があります。特に、Scope2マーケット基準の延長線上でAMIが既存の証書類をどう扱うかは未確定で、目的(排出削減促進)に対して手段(新基準)の効果が明確でないというギャップもあります。

GHGプロトコル専門作業部会(TWG)メンバーグローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)副議長ゼロボード総研所長 待場 智雄 世界中の企業はこれまで、自社の温室効果ガス(GHG)排出量を、「GHGプロトコル」が定める組織のインベントリー(Scope 1~3)に準拠した形で算定・報告してきた(国・地域の報告制度は多少異なる)。Scope 2(他者から供給された電気・熱・蒸気・冷熱を使用したことによる間接排出)の「マーケット基準」ではいわゆる非化石・再エネ証書などエネルギー属性証書(EAC)によって排出量ゼロとみなせる一方で、企業の脱炭素施策は年々多様化しており、グリーンスチール・アルミや持続可能な航空燃料(SAF)やバイオ・合成燃料といった低炭素素材・燃料や、低炭素製品の使用による削減効果(いわゆる削減貢献量)、カーボンクレジットなどを数字に公に反映させる手段が限定されていることが、企業側の不満をもたらし、その努力を妨げる要因になりかねないことが懸念されてきた。2026年3月、GHGプロトコルの改定の一環である「行動と市場手段」(AMI: Actions and Market Instruments)に関する専門作業部会(TWG)の前半(フェーズ1)議論の結果をまとめた「ホワイトペーパー」*1)が公表され、2026年6月15日まで意見募集(RFI)が行われている(当初の5月末から延長)。本稿は、筆者とともにTWGに日本から参加する日本鉄鋼連盟技術・環境部地球環境グループリーダーの川又広実氏(AMI TWG)、自然エネルギー財団シニアマネージャーの高瀬香絵氏(Scope 2 TWG)をゲストに迎えて5月14日開催した弊社ウェビナーの内容を採録し、実務担当者向けにホワイトペーパーの要点を整理した。 GHGプロトコルのコーポレート基準(2004年)*2)、バリューチェーン(Scope 3)基準(2011年)*3)、Scope 2ガイダンス(2015年)*4)の発行からかなりの年月が経ち、国際的な開示の義務化(IFRS S/SSBJ、CSRD/ESRS)、ネットゼロ目標設定(SBTi)、上記のような「市場手段」の登場や様々な脱炭素行動の実践、そしてScope 3理解の進化と算定の広範な普及など、企業を取り巻く環境は大きく変わった。2022~23年のグローバルなステークホルダー調査を経て、基準全体の大幅な見直しが進行中である*5)*6)。GHGプロトコルの改定は、組織算定開示の全体を司るコーポレート基準、Scope 2、Scope 3(事業者の活動に関連する他者の排出)の現行基準・ガイダンスごとの3つの専門作業部会(TWG)に加え、新規のAMIに関するTWGがあり、各TWGはさらに特定の課題を議論するサブグループに分かれている(筆者が参加しているのは、コーポレート基準TWGでデータの信頼性などを議論するサブグループ3)(表1)。 表1:GHGプロトコル改定各TWGの議論テーマ 注:当初計画による議論範囲を示すもので、議論が進む中で修正の可能性あり。GHGプロトコル基準開発計画*7)を基にゼロボード作成 2025年9月には、ISOとGHGプロトコルの戦略的提携が発表され、今後GHG算定に関するISO 1406X規格群との統合を図り、共同ブランドの国際規格となるという*8)。このため、各TWGには気候変動関連規格を審議するISO/TC 207/SC 7の代表が参加、日本からはScope 3 TWGに日本LCA推進機構理事長の稲葉敦氏が加わった。2025年から各TWGの議論が始まり、現在前半戦のフェーズ1が終了した領域(Scope 2、AMI)からパブリックコンサルテーションやRFIが進んでいるところ。Scope 1~3を巡る基準の改訂版完成は2027年末頃、AMI基準は2028年末頃、実務上の完全実施は2030年頃と見られる*9)。今回のAMIのホワイトペーパーはまだ要求事項を含む基準草案ではないため、正式なパブリックコンサルテーションではなく、基準をドラフトする前の中間成果に対して特別に設けられたコメント期間である*10)。そのため、公開された内容が即基準となるわけではない点に注意が必要であるとともに、日本の企業やステークホルダーの実情に合う内容になるよう、大筋が固まる前の今の段階でコメントしておくことは重要である。 AMI作業の出発点は、ビジネスと社会の実情に合わせてGHGプロトコルをアップデートすることにある*11)。現行基準は、あくまでも事業者の活動自体が直接・間接に作り出すGHGの排出・吸収量を収集する「物理的インベントリー」(帰属的算定)を中心に据えてきた。一方で、Scope 2のマーケット基準においては、購入エネルギーに

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