生態系への依存や影響など自然保護の「質」が企業のあり方を左右する
専門家の視点
政府予算の環境保全経費は前年比40%増の3.2兆円に達しましたが、その約7割を脱炭素・GX分野が占め、生物多様性関連はわずか5%に過ぎません。この数値は、脱炭素が環境政策から経済政策へと転換した一方、生物多様性は予算面で低い優先順位に留まっている実体を示しています。記事は「生態系への依存や影響など自然保護の『質』が企業のあり方を左右する」と主張しますが、実際の資金配分は質より量、特にGXへの集中投資という構図です。ここには「規模と効果のギャップ」が潜んでいます。GX関連予算の増加はCO2削減という指標には直結しやすいものの、生態系の健全性という別の価値軸では効果が不透明であり、生物多様性を軽視したままではサプライチェーンの長期的なリスクが見落とされる恐れがあります。また、環境保全の主たる担当官庁が環境省から経産省へ移りつつある点も、経済成長という物語が自然保護の議論を上書きしていることを示唆します。この記事は、短期的な脱炭素成果に偏る企業のGX戦略に対し、生物多様性という「見えにくいリスク」への投資判断を促す警鐘と言えるでしょう。
脱炭素がGXによって環境政策から経済政策化したように、生物多様性にも同様の転換が必要だ。一方、環境保全経費全体に占める生物多様性関連の予算の割合はわずか5%に過ぎない。生態系への依存や影響など自然保護への「質」が企業のあり方を左右する。(オルタナ総研所長=町井則雄) 2026年4月、令和8年度の一般会計予算が過去最大となる約122兆円で成立した。政府は「責任ある積極財政」の考え方のもと、予算全体にメリハリをつけ、「強い経済」の実現を目指すとしている。 では、その中でサステナビリティ関連予算には、どのような重点配分がなされたのだろうか。 環境省が取りまとめている各省庁の環境保全経費を見ると、令和8年度の総額は3兆2835億円となり、令和7年度当初予算の2兆3456億円から約40%増加した。一般会計予算全体の伸びが約6.2%であることを踏まえると、環境関連予算の伸びは際立っている。 環境保全経費は、脱炭素やGXを含む「地球環境の保全」、国立公園の維持や鳥獣被害対策などを含む「生物多様性の保全及び持続可能な利用」、道路環境改善や下水道事業などの「水環境、土壌環境、海洋環境、大気環境の保全・再生の取組」など、7項目に分けられている。 このうち、総額を大きく押し上げているのが、脱炭素やGXを含む「地球環境の保全」である。同項目は昨年度から9452億円増加し、約2.3兆円となった。環境保全経費全体の約7割を占めており、増加分の大半もこの分野によるものだ。 ■環境保全の最大の担い手は環境省から経産省に■生物多様性の優先順位は低いまま■サステナ経営は自然資源があってこそ 株式会社シンカ 代表取締役社長/一般財団法人 22世紀に残すもの 理事長/ 株式会社オルタナ オルタナ総研所長/岩手町政策アドバイザー など 1993年日本財団に入会。「日本財団図書館」・「日本財団公益コミュニティサイト『CANPAN(カンパン)』」の企画・開発を行うと共に、企業のCSRの取り組みを可視化するデータベース「CANPAN CSRプラス」の企画・開発に携わる。「世界を変えるデザイン展」、「未来を変えるデザイン展」の企画・総合プロデューサー。日本財団を2016年9月に退職、企業の社会課題解決型ビジネス創出のサポートやCSR支援を行うため株式会社sinKA(シンカ)を立ち上げ、現在に至る。経産省 地域新成長産業創出促進事業審査委員、内閣府「新しい公共推進会議」情報開示・発信基盤に関するワーキング・グループ委員、G4マルチステークホルダー委員会委員、CSR検定委員会 委員等を歴任。著書(共著) 「CSR検定テキスト」 、「企業と震災(木楽舎刊)」 など。
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