企業動向

鉄鋼業の脱炭素化に向けた「グリーン鉄」 需要創出と国際標準化の動向

2026-05-28
経産省の会合で、鉄鋼業の脱炭素化に向けたグリーン鉄の需要創出と国際標準化の進捗が報告された。

専門家の視点

グリーン鉄の国際標準化と需要創出という二つの動きは、実体がまだ不透明な段階で物語だけが先行している構造です。日本の鉄鋼業は高炉からの水素還元やCCUSなど技術実証の途上にあり、具体の量産コストや供給可能量の確度はまだ低い。ところが経産省の研究会では需要創出策や標準化のスケジュールが先行して語られ、目的と経路の整合性が検証されないまま進んでいる印象です。ここでの最大の隠れた前提は「グリーン鉄の需要は政策誘導で自発的に生まれる」という仮定です。実際には自動車や建設など川下産業が追加コストを負担する覚悟がなければ需要は空洞化します。期待のレイヤーを見ると、投資家はグリーン鉄関連に注目し始めましたが、市民やユーザー企業の行動変容は見えません。実体と物語のズレの核心は、国際標準化が日本の技術優位を確保する装置として語られる一方、欧州や中国の標準化競争で日本が主導権を取れるかは不透明という点です。次に観測すべきは、研究会の議論が実際の商習慣や鉄鋼製品の価格転嫁メカニズムにいつリンクするかです。グリーン鉄の普及は、技術実証以上に需要側の費用負担構造が鍵を握ります。

CO2排出量が多い産業である鉄鋼業。そのカーボンニュートラル化に向けて、低炭素化・脱炭素化された「グリーン鉄」の普及に向けた取り組みが進んでいる。経産省の「GX推進のためのグリーン鉄研究会 第3回フォローアップ会合」では、グリーン鉄の需要創出や国際標準化の動向などが報告された。 日本の鉄鋼業のエネルギー起源CO2排出量(2024年度)は126百万トン(※)であり、産業部門CO2排出量の38%、国全体のCO2排出量の12%を占めている。日本鉄鋼連盟では、カーボンニュートラル行動計画において「2030年度のエネルギー起源CO2排出量(総量)を2013年度比30%削減」を掲げるとともに、2050年に向けてはカーボンニュートラル基本方針を策定している。 代表的な粗鋼製造法である高炉法ではプロセス由来のCO2発生が不可避であるが、その脱炭素化に向けて、高炉で使用する石炭の一部を水素等に転換する「水素還元製鉄」や、石炭を使わずに水素だけで鉄鉱石を還元する「直接還元製鉄」、高級鋼の製造が可能な「大型電炉」などの技術開発が進められている。 このように低炭素化・脱炭素化された鉄は「グリーン鉄」(グリーンスチール)と呼ばれ、国のGX分野別投資戦略では、2030年をめどにグリーン鉄を1,000万トン供給することを目標としている(※2024年度の国内粗鋼生産量は8,295万トン)。 このため経済産業省は、「GX推進のためのグリーン鉄研究会」の取りまとめ(2025年1月)において、「1.GX価値の訴求、国際標準への反映」「2.鋼材のCFP活用拡大、」「3.需要側への支援」「5.供給側への支援」など4分野のアクションを通じて、グリーン鉄の市場拡大を進めることとした。 経産省では、その後の進捗の確認やさらなる対応策を検討するため、同研究会のフォローアップ会合を開催しており、その第3回会合では、高品位な鉄スクラップの供給力確保や国際標準に係る動き等が報告された。 電炉は高炉に比べて製品トンあたりCO2排出量が低いが(約0.5トン/鉄1トン)、生産できる鋼材の種類が限定されるという課題がある。そこで「革新電炉」では、精錬機能の強化や高炉メーカーの保有する一貫製造技術を適用することにより、純度の高いスクラップ材や還元済みの鉄鉱石を用いて、CO2排出を抑えながら高炉同様に幅広い種類の鋼材を生産可能としている。 JFEスチール及び日本製鉄は、高炉と同等の高品位な鉄鋼を生産可能である大型革新電炉を建設中であり、両社の大型革新電炉の生産能力は、2030年時点で合計490万トンとなる見込みである。 大型革新電炉では、製造される鋼材の品質を高め、還元鉄(DRI/HBI)の使用量を低減するため、銅などの特定の物質が少ない高品位な鉄スクラップを使用する必要がある。今後の高品位鉄スクラップの需要増加に対応するため、その安定確保策が求められている。 Copyright ITmedia, Inc. All Rights Reserved. 建設をエネルギーとICTで変える「BUILT」オープン!! 【特集】改正FIT法で対応必須! 太陽光発電の運用保守 ITmediaはアイティメディア株式会社の登録商標です。 メディア一覧 | 公式SNS | 広告案内 | お問い合わせ | プライバシーポリシー | RSS | 運営会社 | 採用情報 | 推奨環境

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