原油高と経済政策(下) 安全保障として脱炭素を 久谷一朗・日本エネルギー経済研究所研究理事
原油高騰を背景に、脱炭素化をエネルギー安全保障の観点から位置づける論説。日本のエネルギー政策・GXの方向性に影響する。"
専門家の視点
この記事の構造は、物語先走りの危険性と実体欠落のリスクを同時にはらんでいます。実体として、原油高という現実の物理的・経済的制約が存在し、日本はエネルギー輸入依存度が高いという逃れられない構造に直面しています。この現実に対し、記事は「安全保障として脱炭素を」とフレーミングし、物語を構築しています。しかし、脱炭素技術の多くはまだ導入コストが高く、基幹電源としての安定供給や経済合理性の面で実体が追いついていないのが現状です。この「物語(安全保障)」が「実体(技術成熟度・コスト)」を飛び越え、期待だけが先行する構造になっています。ここで重要なのは、経済安全保障と脱炭素を直接結びつけることが、エネルギーの安定調達という短期的な実体問題を軽視させるリスクです。現実として、日本は即効性のあるLNGや石炭の調達多様化も同時に進める必要がありますが、記事のフレーミングではそれが脱炭素とトレードオフになりかねません。次の観測点は、この安全保障論が具体の政策や投資判断に落とし込まれたとき、どのような時間軸でどの技術を優先するのか、という実行レイヤーの設計です。