欧州委、第3回「水素銀行」入札結果を発表、低炭素水素も対象に10億ユーロ超の支援を決定
専門家の視点
欧州委の第3回水素銀行入札は、低炭素水素を新たに対象に加え、約10.9億ユーロの支援で130万トンの水素生産と900万トンのCO2削減を見込んでいます。実体として、グリーン水素の入札価格は0.57~0.98ユーロ/kg、低炭素水素は0.44~1.10ユーロ/kgと差は小さく、価格競争は限定的です。一方、中国製電解装置を排除する強靭性基準が導入され、応札事業に対し75%の非中国産要件を課しました。これは「規模と効果のギャップ」として、調達制限がコスト上昇や供給制約を招き、実質的な削減効果を減じる可能性があります。また、スペインとドイツによる追加国費17億ユーロの「AaaS」は、EU共通入札から落選した自国事業を救済する仕組みですが、加盟国間の財政格差を固定化する恐れがあります。全体として、地政学的な安全保障目的がコスト効率を上回る物語が優先されており、省略された利害関係者は、低価格を提供できる中国メーカーと、補助金に依存する欧州域内の高コスト事業者です。
このページではjavascriptを使用しています。 欧州委員会は5月7日、「欧州水素銀行」の第3回競争入札の結果、9件の水素製造プロジェクトを選定した(プレスリリース)。欧州経済領域(EEA、注1)11カ国58事業の応募から、7カ国9事業を選定し、電解装置容量は約1.1ギガワット(GW)、財政支援の総額は約10億9,000万ユーロ規模となった。最初の10年間で130万トン以上の水素を生産し、温室効果ガス排出量は二酸化炭素(CO2)換算で約900万トンの削減が期待されている。 今回の入札では、これまでのグリーン水素(2023年6月30日記事参照)に加え、低炭素水素(2025年7月22日記事参照)が新たに対象に含まれた。グリーン水素製造事業(5件)の入札価格は、水素1キログラム(kg)当たり0.57ユーロ(ギリシャ)から0.98ユーロ(オーストリア)までの範囲となった。低炭素水素製造事業(2件)は、0.44ユーロ(フィンランド)および1.10ユーロ(ドイツ)だった。対象に低炭素水素が加わった中、応募件数はグリーン水素製造事業が50件と依然として最大であり、大きな価格差は見られなかった。また、海運・航空分野向けの水素製造事業(2件)は、いずれもノルウェーの案件で、入札価格はそれぞれ3.48ユーロおよび3.49ユーロと、他のカテゴリーに比べて高い水準になった。 さらに、スペインとドイツは、「オークション・アズ・ア・サービス(AaaS)」を通じ、合計約17億ユーロ(スペイン4億4,000万ユーロ、ドイツ13億ユーロ)を国の財源から追加投入する。これにより、EUの共通入札に参加したが、予算制約から採択に至らなかった自国で展開される事業に対し、各国資金で追加の支援が可能となる。 なお、第3回入札における強靭(きょうじん)性基準では、応札事業に含まれる電解装置の少なくとも75%は、中国以外の国を原産とするものでなければならないとされている。さらに当該75%については、水電解装置の中核部分であるスタックの中国からの調達を認めないほか、主要構成部品(注2)についても中国由来のものは最大2種類までに制限されている。 (注1)EU加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。 (注2)ネットゼロ技術の最終製品および主要構成部品のリストを定めるネットゼロ産業法の実施規則(2025年5月29日記事参照)の定義に基づく。 ビジネス短信 7cd7c3708bdf7946 メンバーズ・サービスデスク(会員サービス班) E-mail:jmember@jetro.go.jp
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