【国際】6.4条監督機関、硝酸製造N2O削減をパリ協定クレジットの対象に。ロックインも回避
パリ協定6.4条監督機関が、硝酸製造時のN2O削減をクレジット対象とする方法論を採択した。
専門家の視点
パリ協定6.4条監督機関が硝酸製造由来のN2O削減をクレジット対象とする決定の構造は、期待先行型のズレが潜んでいます。実体としては、N2OはCO2の約300倍の温室効果を持つ強力な温暖化物質であり、化学肥料の原料である硝酸製造工程からの排出削減は技術的に確立され、経済合理性も高い分野です。この点でクレジット化の根拠は確かです。物語としては、監督機関は「ロックインを回避する」と明記し、化石燃料依存の長期固定を防ぐ意図を示しています。しかし、ここで隠れた前提として「クレジット収益がなければ削減が進まない」という市場メカニズムへの過度な期待が透けます。最も懸念されるのは、期待のレイヤーにおけるズレです。投資家や企業は、この決定を即座に大規模なクレジット供給と収益機会と捉え、N2O削減プロジェクトへの過熱感が生まれやすくなります。ところが、実体面では、硝酸プラントの運転データの検証や、排出削減量のリーケージ(他工程への排出移行)を防ぐMRV体制には、依然として執行レイヤーの人材と技術基盤が追いついていません。つまり、市場の期待が制度の実行能力を上回る「期待先行のズレ」です。