企業動向

第5回:再エネと金融をつなぐ 恵那市の地域循環型脱炭素戦略 - ニッキンONLINE

2026-05-23
岐阜県恵那市が地域新電力「恵那電力」を通じ、再エネ地産地消とJ-クレジット活用で脱炭素と地域経済循環を両立する戦略を紹介。再生可能エネルギーと金融の連携事例。 (34文字)

専門家の視点

恵那市の取り組みは、地域新電力「恵那電力」の設立、J-クレジットの活用、ふるさと納税との連携という、一見すると理想的な「地域循環型脱炭素戦略」を見せています。しかし、構造を分析すると、中小事業者の参加が進まないという「実体の壁」が浮かび上がります。記事ではその原因を「排出量算定のコスト負担や効果への不確実性」と指摘していますが、これは「物語」が先行した構造です。すなわち、市が描く「環境価値を核とした経済循環」という物語は壮大ですが、その実行レイヤーである中小企業にとって、参加の負担が大きく設計されています。補助金で支援するとはいえ、この支援が持続可能なビジネスモデルになるかは不透明です。ここに「物語先走り」の構造があります。また、J-クレジットの創出量がどの程度なのか、地元金融機関が具体的にどのような融資商品を開発したのかといった「実体」を示す数値や事例が記事内で欠落しており、期待先行の側面も見えます。次の観測点は、補助金に依存しない形で中小事業者が自発的に参加できるスキームが構築されるか、そして金融機関がこのモデルをどの程度のリスクテイクで評価するかです。

岐阜県・恵那市は、NGK(旧 日本ガイシ)らと連携し地域新電力「恵那電力」を設立。 再エネの地産地消やJ-クレジット活用を通じ、脱炭素と地域経済循環の両立を進めている。 環境価値を地域産業やふるさと納税と結び付ける中で見えてきた課題と、金融機関との連携可能性を現場視点から探る。 岐阜県南東部に位置する恵那市は、2004年(平成16年)に新設合併により誕生し、人口約4万8千人、面積約504平方キロメートルを有します。名古屋から鉄道・高速道路で約1時間とアクセスに優れ、隣接する中津川市ではリニア中央新幹線岐阜県駅の整備が予定されているなど、今後の広域連携や交流人口の拡大が期待されています。 当市には、1924年(大正13年)に完成した大井ダムによって形成された景勝地「恵那峡」があり、自然の造形と人工物が融合した特徴的な景観を有しています。同ダムは日本初の本格的なダム式水力発電所であり、約100年前から水力発電という再生可能エネルギーを活用してきた歴史があります。こうした歴史的背景は、現在の脱炭素政策を推進するうえでの重要な地域資源となっています。 また、2022年(令和4年)3月に2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロとする「ゼロカーボンシティえな」を宣言し、脱炭素化に向けた取り組みを本格化させています。 脱炭素化に向けた取り組みの一つとして、当市は2021年(令和3年)4月、NGK株式会社および中部電力ミライズ株式会社と共同出資し、地域新電力会社「恵那電力株式会社」を設立しました。同社は、公共施設の屋根や市有地に太陽光発電設備と蓄電池を整備し、2022年(令和4年)4月から電力供給を開始しています。 さらに2024年(令和6年)8月からは、阿木川ダム(独立行政法人水資源機構木曽川上流ダム総合管理所)の水力発電を地産地消電力として活用し、再生可能エネルギーの安定供給体制の強化を図っています。こうした電源の多様化により、さらなるエネルギーの地産地消の実現に向け一つ一つ、着実に進めています。 2022年(令和4年)10月よりJ-クレジット制度を活用し、公共施設で発電された電力の環境価値をクレジット化しています。この環境価値を有効に活用するため、日本酒や栗きんとんといった地場産品にカーボンオフセットの価値を付与し、ふるさと納税の返礼品として登録しています。これにより、環境価値の創出と地域産業振興を組み合わせ、市外からの資金流入を図る新たなスキームを構築しています。 一方で、カーボンオフセット商品の拡充や制度の浸透には課題も残されています。特に中小事業者にとっては、排出量算定に係るコスト負担や効果への不確実性が導入の障壁となっており、取り組みが広がりにくい状況です。このため市では、排出量算定に対する補助制度を設けるなど、きめ細かな事業者支援を実施しています。 これらの取り組みは、再生可能エネルギーの導入、環境価値の創出・流通、さらにはふるさと納税を通じた資金還流を一体的に進めるものであり、地域における新たな脱炭素・経済循環システムといえます。また、金融機関にとっても、再エネ設備や蓄電池導入に対する融資、環境価値を活用した金融商品の開発、さらには地場産品の販路拡大支援など、連携の可能性が広がる分野であると考えています。 こうした官民連携の取り組みを推進するため、「恵那市SDGs推進協議会」を設立しており、地域の多様なステークホルダーとの協働体制の構築を進めています。「ゼロカーボンシティえな」の実現には行政単独での取組では限界があり、金融機関をはじめとする関係者との連携が不可欠です。 クレジット創出量の拡大と活用の高度化を通じて得られる資金を再投資し、さらなる再エネ・省エネ設備の導入を推進していきます。これにより環境と経済の好循環を確立し、「ゼロカーボンシティえな」の実現に向けた脱炭素化を加速させるとともに、金融との連携を一層深化させることで、持続可能な地域経営モデルの構築を目指してまいります。 恵那市 水道環境部 環境課 ゼロカーボン推進室 副室長。 2024年4月着任。 ゼロカーボンシティ実現に向けた脱炭素施策の推進および地域新電力会社「恵那電力」事業に従事。 記事名か執筆者名を入れて質問してください

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