東京海上日動、事故時の脱炭素費用を補償 日本版排出量制度始まる - 日本経済新聞
東京海上日動が事故時の脱炭素費用を補償する保険を提供開始し、日本版排出量取引制度が始動する動きを報じている
専門家の視点
東京海上日動が始めた保険は、企業が事故で排出した炭素をオフセットする費用を補償する仕組みです。日本版排出量取引制度の本格始動を前に、企業のカーボン・オフセット需要が保険という形で具体化した点が実体です。しかし、この保険はあくまで事後的な金銭補償であり、事故そのものの排出削減や予防には直接つながりません。ここに「物語」と「実体」の間の構造的なズレが生じています。制度や保険商品の登場を「脱炭素への前進」と説明する物語は壮大ですが、実際にCO2を減らすのはオフセットのためのクレジット購入であり、物理的な排出削減ではありません。期待先行の側面が強く、企業は保険に加入したことで「対策済み」と誤認するリスクがあります。隠れた前提は「オフセットと削減は等価である」という考え方です。しかし、オフセットは排出の権利を購入する仕組みであり、自社の排出構造を変えるものではありません。実体が物語に翻訳され切れていない構造です。次に見るべきは、この保険が事故の未然防止や削減目標の進捗管理とどう結びつくか、そして排出量取引制度の実効性がどのタイミングで検証されるかです。