ニュージーランド政府、気候変動訴訟の抑制へ法改正 企業活動に法的安定性を提供
専門家の視点
ニュージーランド政府の法改正は、気候変動訴訟が企業活動の「法的リスク」として語られ、その抑制が「経済成長や投資誘致に不可欠」とフレーミングされています。実体としては、温室効果ガス排出を理由とする不法行為責任を一律に否定するもので、ETSなど既存枠組みは維持するとしています。しかし、ここでは「気候変動対策は政府が管理すべき」という物語に、被害者の救済手段や訴訟が果たしてきた社会的な監視機能が省略されています。期待とのズレとして、企業は短期的な安定を得る一方、法改正が国際的な気候責任の流れと逆行し、規制の不確実性を招く可能性があります。目的(企業活動の安定)と手段(訴訟抑制)が倒置され、結果として排出削減のインセンティブが弱まる恐れがあります。日本企業やGX人材は、国内でも同様の訴訟リスクと規制動向を注視し、法域を超えた気候責任の高まりを自社戦略に織り込む必要性を認識すべきです。
5月12日、ニュージーランドのポール・ゴールドスミス司法大臣は、企業が負う気候変動関連の法的義務を明確化し、ビジネス環境の安定を図るため、「気候変動対応法(Climate Change Response Act 2002)」を改正する方針を明らかにした。 今回の法改正の背景には、現在高等裁判所で進行中の民事訴訟がある。同訴訟では、ある原告が国内の主要企業6社に対し、温室効果ガス排出を理由とする損害賠償を求めており、これによる法的リスクが企業心理や投資意欲を阻害しているとの懸念が高まっていた。 ゴールドスミス司法大臣は、法改正の狙いについて「政府が構築した現行の気候変動対応枠組みと矛盾する新たな判例が形成されるのを防ぐためだ」と強調。「法の安定性は、企業活動や海外からの投資誘致、経済成長に不可欠である」と述べた。 改正案では、現在および将来の裁判において、温室効果ガスの排出を原因とする気候変動の損害に対し、不法行為に基づく賠償責任を認定することを禁じる規定を設ける。 大臣は「気候変動対策は、断片的な訴訟を通じてではなく、政府が国家レベルで管理すべきものだ」と指摘。すでにニュージーランドには排出権取引制度(ETS)などの枠組みが存在しており、「裁判所は気候変動の損害賠償を解決する適切な場所ではなく、不法行為法は複雑な環境・経済・社会問題である気候変動に対処するのには適していない」との見解を示した。 なお、今回の法改正は政府の気候変動に対する責任を免除するものではなく、排出権取引制度(ETS)の下で企業が負う義務にも何ら影響を与えないとしている。政府は今後、現行の規制システムの整合性を維持しつつ、一貫したルールに基づく気候変動対策を推進する方針だ。 原文:Government brings certainty to climate change tort law日本語参考訳:政府が気候変動関連の不法行為法に確実性をもたらす ESG Journalでは、実務に役立つポイントや実践ガイド(テンプレート)を紹介しています!国際的な動向からも気候変動への対応や開示の高度化が進んでいます。ぜひこの機会に自社の実務対応を再確認してください。🌍気候変動開示への対応に関連する実務解説はこちら>>> ✅それぞれの制度の概要を比較✅両制度の共通点と活用方法 ✅ISO14001における変更点の全体像✅対応ポイント「今からできる」4つの行動の解説 ✅SSBJ実務対応案で示されている方向性✅今から企業が準備できる開示準備のポイント
本文は配信元の記事から取得した抜粋です。