全国10ブロックで産業再編、半導体・GXに重点 政府が集積計画の素案 - BigGo ファイナンス
専門家の視点
この産業集積計画の素案は、半導体とGXを二本柱とした「物語」を鮮明に打ち出しています。しかし、その実体を見ると、各地域の重点分野は既存の産業基盤や特定企業の進出状況に依存しており、新規の産業クラスターをゼロから創出するというよりは、地域ごとの既存の強みを再編・強調する性格が強いと言えます。期待先行の構造として、交付金や規制緩和といった政策手段は示されていても、それを実行する企業の人材確保やサプライチェーン形成といった実行レイヤーの具体策は見えにくい状況です。特に、半導体分野でラピダスやTSMCを中核としながら、周辺企業の集積をどう同時に進めるのかという時間軸の課題が潜んでいます。隠れた前提として、政府の計画と企業の立地判断が常に一致するという仮定がありますが、実際には企業の投資判断は補助金だけでなく、電力コストや人材流動性といった実体経済の制約に強く左右されます。この計画は、GX・半導体という国家目標を地域に翻訳した物語として機能する一方で、実体が追いつかなければ「物語先走り」に陥るリスクをはらんでいます。
政府は5月18日、全国10ブロックを対象とした産業集積計画の素案を公表した。半導体分野ではラピダスが立地する北海道やTSMC進出の九州を含む8ブロックが、GX分野では洋上風力発電が進む東北など7ブロックが重点分野に名乗りを上げた。このほか関東は航空、近畿は空飛ぶクルマ、沖縄は医療・バイオなど地域特性を生かした産業を選定している。素案は6月策定予定の「地域未来戦略」に反映され、交付金や規制緩和を通じて大規模投資の呼び込みを加速させる方針だ。重要要素日本政府ラピダスTSMC半導体GX(グリーントランスフォーメーション)地域未来戦略北海道九州東北関東近畿四国沖縄 政府は18日、地域経済の活性化を狙い、企業の大規模投資を呼び込むための産業集積計画の素案を公表した。全国を10ブロックに分割し、それぞれの地域特性を生かした重点分野を設定。「半導体」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」を二本柱に、航空や造船、空飛ぶクルマ、医療・バイオといった将来の成長産業を各地に振り分ける形だ。 この素案は、同日開かれた関係副大臣会議で示された。6月にも策定する国家指針「地域未来戦略」の中核に据え、今後、交付金による財政支援やインフラ整備、国家戦略特区制度を活用した規制緩和などを通じて、産業クラスター形成を加速させる方針である。 政府の成長戦略本部が掲げる人工知能(AI)・半導体や造船など17の重点分野を念頭に、各地の地方経済産業局を中心とした検討会が議論を重ねてきた。素案は、既存の産業基盤や企業進出の状況を踏まえ、各ブロックが複数の戦略分野を選定しているのが特徴だ。 半導体分野は、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(Rapidus)の工場建設が進む北海道、そして台湾積体電路製造(TSMC)の工場が稼働し「シリコンアイランド」の復活を印象づける熊本県を擁する九州が、それぞれ中核拠点として名乗りを上げた。これに加え、関連企業の集積が進む東北、北陸、中部も半導体産業の受け皿として計画に名を連ねた。 GX分野では、洋上風力発電施設の導入が進む東北が牽引役となる見通しだ。脱炭素電源の適地として、原発や再生可能エネルギーの集積地でもある東北を筆頭に、関東、中国、四国など7ブロックがGX関連産業の育成を掲げた。四国はGXの一環として、半導体分野の集積も同時に図る戦略を打ち出している。 産業集積を検討する重点分野は、半導体とGXにとどまらない。関東ブロックは成田空港を核とした「航空」産業を掲げ、近畿ブロックは次世代の移動手段として期待される「空飛ぶクルマ」の拠点形成を目指す。また、中国・四国ブロックは瀬戸内の伝統産業を進化させる「造船」を候補に、沖縄ブロックは地理的特性を生かした「医療・バイオ」分野での集積を検討する。 政府は今後、この素案を精査し、各ブロックの計画を順次、正式決定する運びだ。地域のポテンシャルを最大限に引き出すと同時に、経済安全保障の観点からも重要な半導体や脱炭素技術の国内基盤を強化するこの戦略は、日本経済の構造転換を占う試金石となりそうだ。
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