企業動向

苫小牧市と田中鉄工 官民連携で挑む2050年カーボンニュートラル CCS・廃食油活用と子ども主体 ...

2026-05-18
苫小牧市と田中鉄工がCCSや廃食油活用などを通じて2050年カーボンニュートラルを目指す官民連携プロジェクトを公演で発表した。

専門家の視点

苫小牧市と田中鉄工の取り組みは、CCS実証で累計30万トン圧入、廃食油回収で約2万3千リットル/年という実績を示しています。しかし、産業部門由来のCO2排出量が市全体の71%を占める中で、これらの規模は目標値(CCS年間150〜200万トン、アスファルトプラント排出量半減)に対して依然として限定的であり、規模と効果のギャップが顕著です。記事は「官民連携」「子ども主体」「地域循環」という肯定的な物語で強調されていますが、CCSの長期コストや地中貯留リスク、廃食油の供給安定性といった実装課題は省略され、目的と手段が倒置する懸念があります。また、「民間主導で行政が支援」という主語の曖昧化により、具体的な負担者や責任範囲が不明瞭です。日本企業・GX人材は、地域のユニークな取組に学びつつも、現場の数値リスクを検証し、市民の協力負担を軽減する仕組みを設計する姿勢が不可欠です。

2026年5月14日、「自治体WEEK」特別公演として、北海道苫小牧市の金澤俊市長と、アスファルトプラントメーカー・田中鉄工株式会社(佐賀県三養基郡基山町)の代表取締役社長兼CEO 村田満和氏が登壇した。2050年カーボンニュートラル実現に向けた自治体のSDGs教育と官民連携事業をテーマに、産業集積都市・苫小牧の脱炭素戦略と、田中鉄工が推進する「ロードカルSDGsプロジェクト」の実践事例が共有された。 (左から)北海道苫小牧市の金澤俊市長と、アスファルトプラントメーカー・田中鉄工株式会社(佐賀県三養基郡基山町)の代表取締役社長兼CEO 村田満和氏産業集積都市・苫小牧が描く「選ばれる町」 北海道の道央南部・胆振地方に位置する苫小牧市は、人口約16万3,000人を有する道内第4位の都市である。国際拠点港湾「苫小牧港」と新千歳空港の滑走路を擁する「ダブルポートシティ」として、多様な企業・産業が集積する経済都市として北海道を牽引している。近年は隣接する千歳市での次世代半導体製造工場の建設や、大規模な環境関連プロジェクトの誘致も進む。 金澤市長は、10年以上続く人口減少と人手不足への対応として「のびゆく苫小牧!選ばれるまち苫小牧へ!」を掲げ、「子どもど真ん中」政策を第一に据えている。日本ハムファイターズ二軍施設の誘致では、胆振地域の自治体と広域連携で取り組み、10万人規模の署名を集めた。市長自身も妻と1男4女の7人家族で、最近犬を加えて8人家族となったと自己紹介で語った。 樽前山(活火山)、支笏湖(カルデラ湖)、ラムサール条約登録湿地のウトナイ湖など豊かな自然環境も特徴であり、自然と産業の共存を目指して生物多様性地域戦略の策定にも取り組む。 苫小牧市が排出する二酸化炭素の約71%は産業部門に由来する。だからこそ、事業者を巻き込んだ官民連携が脱炭素実現の鍵となる。 代表的な取り組みがCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術である。日本初の大規模実証試験として2012年度から準備が始まり、2016年4月にCO2圧入開始、2019年11月に目標の累計30万トン圧入を達成した。その後、2025年2月には経済産業省が苫小牧市沖を試掘・貯留作業ができるCCS事業の「特定区域」に初めて指定。石油資源開発(JAPEX)、出光興産、北海道電力による共同検討が進み、年間150万〜200万トン規模のCO2貯留事業化が見込まれている。 また、苫小牧市は3度目の申請で2023年11月の第4回選定にて、国の「脱炭素先行地域」に指定された。計画名は「ダブルポートシティ苫小牧の次世代エネルギー供給拠点形成への挑戦」。製紙会社の工場跡地を含む勇払地区など、ものづくり産業が集積する西部工業基地内の産業施設に大規模な太陽光発電を導入し、自家消費するとともに余剰再エネ電力を隣接する勇払市街地エリアへ供給する。参加企業からの地域振興費を財源に、産業部門の脱炭素化が民生部門のゼロカーボンと地域振興に資する全国でも珍しいPPAモデルだ。 このほか、石炭火力発電所でのアンモニア混焼、LNG拠点づくり、グリーン水素のサプライチェーン構築など、産業部門での脱炭素プロジェクトが多層的に動き出している。 「民間主導で行政が支援し、家庭部門の省エネと合わせて街全体のゼロカーボンを進めていく」と金澤市長は強調した。 田中鉄工は1918年創業、アスファルトプラントの設計・製造を国内2社のみで手がけるニッチプレーヤーで、アスファルトプラントメーカーとして全国にサービス拠点を展開している。全国に約1,000台あるアスファルトプラントから排出されるCO2は年間約140万トンに上り、同社はこの排出量を2030年までに半減、2050年までに国内道路舗装業界のカーボンニュートラル達成を目指している。 その中核となるのが「ロードカルSDGsプロジェクト」だ。「road(道)」と「local(地域)」をかけた造語で、地域で発生した廃食用油をアスファルトプラントの重油代替燃料として活用し、地元の道路に還元する循環型の仕組みである。スーパーマーケットや自治体と連携してサプライチェーンを構築している。 廃食油の活用はカーボンニュートラルだけでなく、SOx削減による大気汚染防止、資源ごみの減量、海洋・水質汚染の防止にも寄与する。家庭系廃食油の利活用率は依然として低く、回収場所の拡充と市民協力の仕組みづくりが課題である。 北海道では小樽市と連携し、市内で回収した廃食油を市内のアスファルトプラントで燃料化、小樽市・余市町の道路に還元するモデルを構築。札幌市・小樽市のデータでは約1年で約2万3,000リットルの回収実績が確認されている。 「市と市民と事業者が一丸となる仕組みづくりが、地域での脱炭素を加速させる」と村田CEOは語る。

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