制度・政策

【国際】OECD、対日経済審査2026公表。財政健全化、労働市場改革、再エネ拡大を提言

2026-05-17
OECDが対日経済審査2026で財政健全化や労働市場改革とともに、再生可能エネルギー拡大を日本に提言

専門家の視点

OECDの対日審査は、日本の構造課題を包括的に指摘するものの、その提言の実効性は限定的です。財政健全化と再エネ拡大を同時に求める点で、目的と手段の倒置が生じています。具体的には、消費税率引き上げは短期的な需要を冷やし、再エネ投資の原資を減少させる可能性がある一方、カーボンプライシングの詳細が未公表のままでは企業の投資判断は停滞します。また、労働市場改革の提言では「正規雇用の柔軟性を高める」と「非正規の待遇改善」が両立的に語られますが、主語が「政府」なのか「企業」なのか曖昧で、実際の責任主体が不明瞭です。さらに、女性のSTEM比率がOECD最低という問題に対し、「メンタリング強化」というソフトな手段だけが提示され、大学入試や雇用慣行の根本的改革には触れていません。日本企業・GX人材は、このような国際機関の提言を待つのではなく、自社のカーボンプライシング内部導入や技術ロードマップ策定を通じて、不確実性の中で自律的に投資判断を下す姿勢が求められます。

経済協力開発機構(OECD)は5月13日、最新の「OECD対日経済審査2026」を発表した。人口動態の急激な変化や外部環境の逆風に対処するため、財政の持続可能性確保、生産性向上、労働供給の拡大に向けた包括的な改革を継続する必要があると訴えた。 【参考】【国際】OECD、対日経済審査2024公表。公的債務、グリーン、労働市場で一層の改革提言(2024年1月13日) 最新の動向では、日本のGDPは2025年に1.2%成長し、エネルギー価格の上昇や中東紛争の不確実性により、2026年には0.7%、2027年には0.9%へと減速すると予測。成長の原動力は内需で、賃金上昇が実質可処分所得を押し上げることで民間消費を支え、堅調な企業収益と経済対策が設備投資を後押しするとした。インフレ率は2026年に2.0%、2027年に1.9%と日銀の目標水準で推移する見込み。 (出所)OECD 政策提言として、第一に財政の健全化を挙げた。公的財務残高は2024年時点でGDPの約206%、労働力人口に対する高齢者の割合は2060年に79%に達すると見込まれている。公的債務の削減を優先事項とし、年金・医療・介護等の社会保障費の伸びの抑制、消費税率の段階的引き上げ、補正予算の制限を提言。また、言語の壁を含む行政手続きの合理化による直接投資の誘致や、企業の新陳代謝を高める的を絞った中小企業支援が必要とした。 (出所)OECD 労働市場の改革では、女性や高齢者の非正規雇用割合が高い現状を指摘。正規雇用の柔軟性を高めることで、労働市場の二重構造を打破する必要性を訴えた。外国人労働者の受け入れと統合を進める政策や、女性、高齢者、非正規労働者向けの質の高いリスキリングプログラムの提供も不可欠としている。 (出所)OECD また、STEM分野の卒業生割合はOECD平均を下回っており、特に女性は3.6%とOECD加盟国の中で最低。女性の教育・就職においてSTEMがあまり選ばれていない現状にはステレオタイプが部分的に影響しているとして、高校や大学前期の女子学生に対する効果的なメンタリングの実施等、STEMキャリアへの認識と関心を高める取り組みを強化するべきとした。 気候変動とエネルギー政策の分野では、化石燃料への高い依存から脱却し、ネットゼロ目標の達成とエネルギー安全保障の強化を加速させるよう要請。政府のGX2040ビジョンを効果的に推進するため、導入予定のカーボンプライシングの詳細を速やかに公表して企業の投資の確実性を高めるべきとした。さらに、複数の行政機関にまたがる手続きを一元化し、許認可プロセスを合理化することで再生可能エネルギーの導入を後押しするよう提言した。 【参照ページ】Japan needs to boost productivity and labour supply to address demographic pressures and strengthen growth ※ 閲覧チケットは翌月への繰り越しはできません。 【無料会員向け】有料記事の閲覧チケットの詳細はこちら 株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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