原子力発電の新増設のために何が必要か? 原子炉の新増設実現への期待と課題(1) - mri.co.jp
原子力発電の新増設には技術的・制度的課題があり、GX実現に向けた期待と課題を分析している。
専門家の視点
原子炉新増設の議論では、安全性の確保と電力安定供給という二つの要請が制度的に非対称です。新規制基準の審査は世界で最も厳格とされ、事業者は許認可取得までに長い時間と巨額な投資を強いられます。一方で、運転期間の延長や既設炉の有効活用といった現実的な選択肢が同時に提示されることで、新増設という目標自体の優先度が曖昧になっています。ここに物語先走りの構造があります。政策のビジョンは新増設を掲げるものの、実際の工程表や人材育成、核燃料サイクルの具体像が示されず、実体が追いついていません。次の観測点は、原子力事業者が公表する具体的な建設候補地と、規制委員会の審査インフラが同時に整備されるかです。両立しにくい事実として、新増設には地元合意と企業の投資判断が必要ですが、電力市場の自由化によって長期回収の不確実性が増している点が無視できません。GXの観点では、原子力を脱炭素電源として位置づけるなら、停止中の既設炉の再稼働と新増設を別々の時間軸で扱うべきですが、現行の議論はそれを同一視しています。