制度・政策

排出枠上限額、社内炭素価格の3分の1 投資判断遅れ懸念 - 日本経済新聞

日本経済新聞 2026-05-14
排出枠の上限額が社内炭素価格の3分の1程度であるため、企業の投資判断に遅れが生じる懸念があると報じている。

専門家の視点

排出枠の上限額が社内炭素価格の3分の1という数値は、制度の実効性と企業行動の間に明確な非対称性を示しています。社内炭素価格は将来の炭素コスト上昇を織り込んだ戦略的シグナルですが、現行の排出枠価格がそれを下回る限り、内部での脱炭素投資の経済合理性が弱まります。ここには物語先走りの構造があります。政府は制度設計の目的として長期的な排出削減を掲げますが、市場価格が短期的な需給で決まるため、企業は高い社内価格で投資判断する正当性を社内外に説明しづらくなります。結果として、実行レイヤーである事業部門の投資判断が遅延します。時間軸の問題も深刻です。設備投資は長期固定資産であり、現行価格が低いほど導入の先送りが合理的になり、炭素回収や水素転換などの高コスト技術の採用が遅れます。隠れた前提は「排出枠価格の上昇を企業が当然視する」ことです。実際には供給量の調整が政治的に困難で、価格は低位に張り付く可能性があります。次の観測点は、2026年度以降の排出枠の供給量見直しと、罰則の実効性の設計です。社内炭素価格と公的制度の価格差を埋めるのは、補助金ではなく制度そのものの引き締めしかありません。

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