制度・政策

排出枠下限、40年度1.8万円の試算「燃料転換すぐ促さず」 - 日本経済新聞

日本経済新聞 2026-05-13
政府が排出枠取引制度の価格下限を2030年度に5000円、40年度に1万8000円と試算し、急激な燃料転換を促さない方針を示した。

専門家の視点

政府の排出枠価格下限試算は、2030年度5000円、40年度1万8000円という数値自体は具体的ですが、その水準が実質的な排出削減を促すかは疑問です。記事は「急激な燃料転換を促さない」というフレーミングで、企業の負担軽減を強調していますが、これにより目的である脱炭素の加速と手段である価格シグナルの強度が逆転しています。つまり、価格下限が低く抑えられることで、排出権取引制度本来の「炭素に価格をつけて行動変容を促す」機能が弱まり、KPI(価格目標)の達成自体が自己目的化している可能性があります。また、比較基準の恣意性として、欧州の排出権価格(現状60~80ユーロ超)と比べて著しく低い点が省略されており、国際的な脱炭素競争における日本企業の相対的な立ち位置が不明瞭です。さらに、この価格帯では投資回収が難しいと見なすグリーン水素やCCUSなど、大規模な燃料転換に必要な技術への設備投資が先送りされるリスクが見過ごされています。省略された利害関係者は、将来の排出削減義務を負う次世代企業や、気候変動影響を受ける市民であり、現在の産業界の負担軽減が優先されています。 日本企業は低価格帯で当面の負担を抑えられる一方、国際炭素価格格差が拡大すれば輸出競争力やESG評価で不利になるため、政策主導の緩やかな移行に依存せず、自主的な構造転換を早めることが不可欠です。

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