制度・政策

EUで排出量取引の新基準案、産業界へ無償配分継続 | LOGISTICS TODAY

2026-05-12
EUの排出量取引新基準案では産業界への無償配分を継続し、域内物流サプライチェーンの脱炭素化対応を求める内容

専門家の視点

EU排出量取引の新ベンチマーク案は、産業界の無償配分を平均排出量の75%相当で維持する一方、間接排出分の反映により40億ユーロの財務影響を生じさせる設計です。ここには「脱炭素化と競争力維持の両立」という物語が掲げられていますが、実体として重要なのは、上位10%の効率設備を基準とする原単位規制が、技術革新の速い業界と遅い業界で非対称に作用する点です。電化促進を目的とした間接排出分の反映は、電力価格の高い加盟国で操業する企業に相対的に不利な負担を強いるため、域内の生産拠点移転を招く可能性があります。物語は「柔軟措置の最大限活用」と説明しますが、実行レイヤーでは企業が追加購入する排出枠の価格変動リスクを誰が負うのか、という観点で見る必要があります。物流業界への影響は、海運分野への適用拡大と電化車両導入が同時進行する点で、輸送モード間のコスト競争力が地殻変動を起こす時間軸の問題です。「ETS投資ブースター」の300億ユーロは公的な資金ですが、配分先の選定基準が不明瞭であり、中小企業への支援が実際に到達するかは不透明です。

国際欧州委員会は11日、EU排出量取引制度(EU ETS)の2026-30年向け新ベンチマーク案を公表し、加盟国・一般向け協議を開始した。産業界向け無償排出枠配分の算定基準を見直すもので、欧州産業の脱炭素化と競争力維持の両立を狙う。 EU ETSでは、製造業などに対して排出枠を一部無償配分している。基準は各業界で最も効率的な上位10%の設備性能をもとに設定され、それを上回る排出分については企業が排出枠を追加購入する仕組みだ。今回の見直し後も、産業界全体では平均して排出量の75%相当を無償配分でカバーする見通しとなる。 欧州委は今回、産業界の懸念に対応する形で制度上の柔軟措置を最大限活用したと説明。特に電化促進を目的に、14の製品分野では電力使用に伴う間接排出分もベンチマークへ反映する。これにより、26-30年期間で40億ユーロ相当の財務影響が生じるとしている。 今回の基準改定は、4月1日に提案された市場安定化準備金(MSR)改革とも連動する。欧州委は、将来的な排出枠供給ひっ迫や価格変動リスクへの対応力を高め、炭素市場の安定性と予見性を強化する狙いを掲げる。 物流業界への影響も大きい。EU ETSは既に海運分野へ適用が拡大されており、今後は輸送時のCO2排出コスト管理や低炭素輸送への転換圧力が一段と強まる可能性がある。特に欧州域内物流では、電化車両導入、低炭素燃料利用、倉庫設備の脱炭素化などサプライチェーン全体での対応が求められている。 また、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は3月、ETS排出枠4億枠を活用した総額300億ユーロ規模の「ETS投資ブースター」構想を発表済み。中小企業も含めた脱炭素投資支援を進める方針だ。産業熱利用や温度帯別熱需要など、業種ごとの実情に応じた脱炭素支援も検討されている。 欧州委は7月にもEU ETS全体見直し案を公表予定で、産業別補完ベンチマーク導入など追加改革も議論される見通し。気候政策と産業保護を両立させる制度設計が物流・製造分野を含めたサプライチェーン全体へ波及し始めている。 ■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。 ※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。 LOGISTICS TODAY編集部 メール:support@logi-today.com LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。 ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。 UPS、TNT買収提案を撤回、「欧州委の決定に失望」 13/01/31 日通、欧州委から制裁通知、「信頼回復に取り組む」 12/03/29 欧州委、UPSによるTNT買収提案を棄却 13/01/31 EU、2040年に大型車のCO2排出9割減へ規制案 23/02/15 欧州委、UPSとTNTの合併に異議通知 12/10/23 ESR、物流・データセンター両輪に日本投資強化 26/05/12 琉球倉庫運輸に下請法違反勧告、運賃減額で公取委 26/05/12 経団連会長、中東緊迫で「需給両面対策も」 26/05/12 三井不動産、印データセンター投資に初参画 26/05/12 運輸業の新設法人2.5%増、人手不足下でも増勢維持 26/05/12 CMA CGM、ケニア政府と物流インフラ協力で提携 26/05/12 日本精工とNTNが経営統合、軸受け供給網を再編 26/05/12 トラスコ中山、土岐市と災害物資供給協定 26/05/12 NTTデータ、車載半導体の企業間連携基盤構築 26/05/12 NXHD、HPEから物流分野最高位表彰を初受賞 26/05/12 経産省とOECD、供給網連携強化へ会談 26/05/12 シーオス、トヨタL F熊本と工場搬送自動化推進 26/05/12 DSV、AI活用で生産性9000億クローネ改善へ 26/05/12 Leach、中小運送会社向けAI業務OS構想発表 26/05/12 日本郵船、自律運航船でシンガポールへ初寄港 26/05/12

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